2013.06.01
知らないと損をする! 工場改革成功の条件(1)
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執筆者:
沢柳 知治
■ はじめに
なぜ、あなたはこのコラムを読もうと思いましたか?
タイトルが気になったから?
社員の意識を変えたいから?
工場改革を進めたいけど、方法が分からないから?
このコラムでは、頭で分かっているけれど、なかなか実行できない工場改革成功の条件を、研究事例と私の経験をもとに、あなたも明日から実践できるようにまとめました。
■ 「予言の自己実現」とは
『夢は手帳に書けば叶う!』
『人に語れば夢は叶う!』
あなたも一度はこんな話を聞いたことがあると思います。
アメリカの社会学者ロバート・マートンは、これを予言の自己実現と呼んでいます。
あなたは予言の自己実現を実践したことはありますか?
それはどんな内容ですか?
その結果、どのようになりましたか?
この予言の自己実現を活用することで、工場改革成功の確立が劇的に上昇します。
では、具体的にどのように予言の自己実現を活用し、工場改革を進めて行くことが重要なのでしょうか。
■ 「予言の自己実現」から考えるトップの役割
カンザス州立大学アルバート・キング教授が1970年代に下記のような実験をおこないました。
1.ある会社が所有している四つの工場に下記のような目的と指示を落とし込んだ。
工場(1):生産性向上を目的に、多能工化の実験をすると指示
工場(2):欠勤の減少を目的に、多能工化の実験をすると指示
工場(3):生産性向上を目的に、切替時間短縮の実験をすると指示
工場(4):欠勤の減少を目的に、切替時間短縮の実験をすると指示
2.多能工化と切替時間短縮の結果を調査した。
3.十二ヶ月後、生産性と欠勤の結果を調査した。
十二ヶ月後・・・
生産性向上が目的といわれた工場(工場(1)、(3))の生産性は6%増加、欠勤の減少が目的といわれた工場(工場(2)、(4))は欠勤が12%減少しました。そして、この結果は多能工化と切替時間短縮のどちらに取り組んだかには無関係でした。
この実験結果と予言の自己実現を組み合わせて考えると、工場改革活動の目的をトップが明確に全員に落とし込むことが工場改革成功の必須条件であるといえます。
キング教授も「業績に関する経営者の期待は予言の自己実現として働いているのかもしれない」と述べています。
つまり、トップが改革の目的を発信することこそが、工場改革成功の第一歩です。
私が工場改革のお手伝いをする場合は、事前にトップの方と工場改革活動に取り組む目的をトップ自らの言葉で発信できるよう、入念に打合せをしています。そして、改革活動スタート前にトップからミドルへ活動の目的を落とし込んでいただき、改革活動スタート時にはトップから再度ミドル、 そしてボトムへの落とし込みを行っていただいております。
活動の目的が確実に落とし込まれていると、パートの方からも「会社を良くしたい!」、「これならすぐにできる!」などの発言が出てきます。そして、経営成果につながるアイディア、改善提案が出てきます。
一方、目的が落とし込まれていない場合、活動のベクトルが合わず、取り組みテーマが発散して経営成果につながりません。また、メンバーからも「このままで問題ない」、「やっても意味がない」などの意見が出てきます。 その結果、活動のモチベーションが下がり、活動前より悪い状態になってしまう場合もあります。また、目的が落とし込まれていないと手段が目的化したり、安全や品質を無視した作業改善が進み、労災や重大クレームにつながってしまうおそれもあります。
では、どのように目的を落とし込んでいけばよいのでしょうか?
目的の落とし込み方は、トップの言葉だけでなく、ポスター掲示、活動の愛称作成、ミドルからボトムへの落とし込みなど様々あります。私も指導会にて目的をホワイトボードの最上段に板書してから指導会をスタートするなど、全員に目的を刷り込んでいくよう意識しています。
しかしながら、最もよい方法は、トップ自らが何度も現場に足を運び、自分の言葉で直接目的を落とし込むことです。
新しい活動をスタートする場合、小集団サークルや定期的な会議の場でも、改めて活動に取り組む目的を考えて、あなたの言葉で発信してみてはいかがでしょうか。