1.はじめに
第1回では、改善・改革の現場における心理カウンセリグ手法の活用についてお話しました。今回は逆の視点で改善活動の失敗事例を私の経験からご紹介します。これは私自身がカウンセリングマインドの習得を志すきっかけとなった事例でもあります。
2.コンサルティングでの失敗経験
A社での事例
ある日、A社の社長様より開発の量産化に向けたコンサルティングの依頼を受けました。 支援の中では数々の試作を繰り返す中で、製品仕様の改良・確定、製造条件の確立、設備の改造などの支援を開発・設計・生産技術・製造を巻き込んでの活動を実践していました。 限られた期間での立上げということもあり大変ではありましたが、私自身毎回クライアントのところに出向き、コンサルティングを行うことが本当に楽しく充実をしていました。
活動がスタートして数ヶ月が経ち、ある一定の効果もあり若干の物足りなさを感じながらも満足感はあり、成果が出たことに対しても自信がありました。 しかしA社社長の評価は自分が期待したものとは程遠いものでした。
「社長は何を期待されていたのか?」
それは活動に参加したメンバーの意識・考え方・行動が変わっていないことにありました。 実際にその後、お客様の急な製品の仕様変更により、材料を大幅に変更する必要性が出た際、メンバーだけでは対処しきれなかった。 つまり指示を受けて実践した経験はあるが、 『自ら考えて行動する』 という未知のことに対して足を一歩前に踏み出すことができなかったのです。 社長様は、今後発生してくるであろう問題に対して、対応できる人材が育っていない、自社内にそのような力が備わっていないことに不満を持たれていたのです。
3.何が失敗の要因だったのか?
答え: 要因は 『コンサルタント』 が 『改善マン』 や 『インストラクター』 になってしまったためです。
A社のコンサルティングを行う上で、限られた期間内で成果を出さなければならない状況の中、コンサルタント自身が陣頭に立って現状把握・原因追求・対策実施・評価を行っていたのです。 確かにコンサルティングを行う上でクライアントを正しい方向に導いていくことがコンサルタントの役割ではあるのですが、A社での場合はコンサルタント自身が何から何までを考え・行動に移していた。 またコンサルタント自身ができない部分を活動メンバーに指示し、メンバーを指示通りに動かしていたのです。まさにコンサルタントが『改善マン』に陥ってしまったことが失敗の要因です。
つまり 『来談者中心療法』 の療法の名前にあるように本来、来談者(=クライアント)を中心として物事を進めて行くべきことが、コンサルタントの見方・考え方、そして行動が中心になって物事を進めていたことになります。
このような状況ではコンサルタントがいなくなると、継続して成果を出し続けることはできないのです。
4.カウンセリング技術を導入した経緯
収益改善や生産性向上などのテーマでコンサルティングを行う中で、企業内の本当の問題や課題は何なのか?特に 『潜在化されている』 『背景的な問題』 は何なのか?を追求してきました。
その結果、やはり人のマインドや組織上の問題が大部分を占めており、その解決策が企業内にはまだまだ熟知されておらず、各人の属人化された知識・経験を基に問題解決がなされていることが多く見受けられました。
このような状況に対してカウンセリングの技術を盛り込んだ解決策を体系立てご支援することが急務であると感じたためです。
氷山に見立てた顕在化・潜在化された問題や課題
5.次回のコラムについて
次回のコラムでは、今回の事例紹介のような失敗に陥らないための策について、更に心理カウンセリング療法や事例を交えながらご紹介します。