第2回 課題にどう立ち向かうか?
前回は、国内製造業の現状の課題を挙げましたが、今回はそれぞれの課題に対する方策を説明します。
3.課題に対する方策
(1)組織の目的、役割が明確になっていない
企業や工場には、その企業の方針、工場方針があるはずです。そして本来であれば、その方針に基づき、各部門の機能に展開され、それらを実現するために業務を行うことになります。 しかしながら、多くの企業では、上位の方針と業務が繋がっておらず、何のための業務を行っているかが明確になっていないのが実情です(図1参照)。
<図1> 現状の方針と業務
従業員の方々が行っている業務を企業にとって価値ある内容にするためには、この方針と実際の業務が結びつくようにしなければなりません。 そのためには、図2で示したような機能展開を行い、方針と業務が関係付けられるようにする必要があります。 そして、この機能展開こそが組織の目的、役割に相当することになります。
<図2> 方針と業務が機能展開で繋がった機能展開図
実際にこの機能展開をした際、既存の業務が機能展開に繋がらなければ、目的がない業務をやっていることになり、その業務はムダであることになります。 また、その機能を達成するための業務がない場合には、その機能を達成するための業務を行わなければなりません。
このように機能展開と業務を繋げることができれば、業務の目的が明確になり、企業方針にそってムダなく価値を生み出す業務を行うことが出来ます。 ただ、これらの機能展開は一度決めても方針や外部環境が変わったら見直しが必要となります。
(2)人材が育っていない(特にリーダー)
先に触れたように、リーダーは先を見た仕事をしなければなりません。 (1)の組織の目的、役割を達成するために、何をしなければならないかを常に考え、そのためにメンバーの方々を中心とした組織の経営資源をマネジメントしなければなりません。 しかしながら、実際は大半の時間を後始末の対応やルーチンの仕事に費やしている場合が少なくありません。
また、メンバーの方々も、改善提案制度等を用いて改善に取り組んでいますが、結果としてノルマの件数達成のため、提案を出すことが目的になってしまっており、 本当に改善すべき問題や課題が放置されている場合も多く見られます。
そして、リーダーやメンバーの方々に対して、最近特に感じるのは、コミュニケーションが不足していることです。問題や課題が出てきても、それらを自分一人であるいは自部門だけで解決しようとする。 したがって、部分最適な改善となってしまい、根本的な問題の原因が解決されません。
このような状況の中で、VPMによるコンサルティング活動では、D改善とC改善という2つのアプローチで改善活動の取り組みを行い、経営成果に結びつく成果を上げると共に、人材の育成を行っています。
D改善(Design & Develop)は、デザイン思考で作業や業務のやり方、設計仕様、製造工程の中の潜在的なムダを追求していくアプローチで、プロジェクト型の改善の進め方で行います。 一方、C改善(Change & Control)は、毎日の作業や業務の中から問題点を見つけ出し、解決をはかっていくアプローチで、全員参加型の改善になります。
<図3> C改善とD改善
D改善を進める際は、リーダー中心に自ら目標を設定し、課題設定、対策立案を行っていきます。 そして、図3のようなD改善のサイクルを回す中で、課題設定力が育成され、課題解決力を向上していきます。 この取り組みの中で、目標を達成するためには部門を跨った課題に取り組まざるを得ない状況になり、リーダー自らが中心となって改善のためのアクションを起こさなければ課題の解決ができません。 結果として、リーダーのリーダーシップ、マネジメント力が向上していきます。
C改善を行う際は、日常管理している生産性や不良率、直行率等の管理指標を用いて基準と実績の見える化を行い、その差異を評価し、そこから問題を見つけるようにします。 また、それ以外にも日常の作業、業務を行っている中で発生している問題を、何でも良いので出してもらうようにします。 その際、問題に対する対策の検討や実施までとなると提案が出にくく、大きな問題があっても埋もれてしまう場合が多いので、あくまでも問題だけで良いので提案してもらうことが重要です。 そして、出てきた問題に対して、活動チームの中で原因追求、対策検討を行います。自分たちだけで解決が困難な場合は、D改善テーマとして取り組んでいく事になります。 このC改善のサイクルを回す中で、メンバーの問題を発見する力が育成され、自ら問題に取り組んでいくことによりその解決力が向上していきます。
活動初期はD改善とC改善の両輪をコンサルタントが回していきますが、徐々に自分たちで回せるようになり、最終的には、自主自律的に取り組んで行ける人材が育ち、自分たちで考え、自ら行動できるようになっていきます。
次回のコラムでは、もうひとつの課題 “技術技能の伝承が出来ていない。”に対する方策を説明致します。