2012.07.20
成功する改革と失敗する改革(4)
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執筆者:
小久保 和孝
第4回 失敗しないコンサルタントの使い方
先回まで、企業改革の成否を分ける条件について述べてきた。その条件においてミドルマネジメントの位置づけは極めて重要である。経営トップの意向を行動レベルにブレークダウンする能力。 すなわち、論理展開と進捗管理という2つの能力の必要性だ。この機能が有機的に働いてこそ、活動のベクトルが生まれる。そして、進化のエネルギーとして強み “ 組織風土のDNA ” が形成されてくる。
この活動を側面から支援するのがコンサルタントの存在だ。コンサルタントは経営トップの想いを実現するために活動に介入する。しかし、活動推進は社員の皆さんを抜きにしては語れない。 コンサルタントは何処からか現れてたちどころに問題を解決して去るスーパーマンではない。
今回は、本コラムを締めくくるテーマとして、コンサルタント活用の秘訣についてお伝えしたい。実は、コンサルタントの有効活用が活動を有利に成功に導く条件であるからだ。
4.失敗しないコンサルタントの使い方
活動を成功させるには次の事に留意すべきである。それは下記の3点である。
1.コンサルタント任せにしない
2.トップダウンとミドルアップを強くする
3.改革断行の情熱を絶やさず、社内を共感で溢れさせる
これを念頭に、コンサルタント活用の成功ポイントを考えていきたい。
(1)コンサルタントの異質を活用していただきたい
導入初期ではコンサルタントは全くの異文化であらねばならない。従来の企業の枠組みでは決して生まれない発想や発言があってしかるべきだ。 もしかするとこれまでの企業文化では奇異にもとられかねないが、まずは、コンサルタントは改革の旗手として、社内・社外および各部門に鮮明なビジョンを提示すべきである。 勿論、経営トップの意向に沿っての振る舞いであることは当然である。そしてその異文化に組織は、「今度は違うぞ」と期待を膨らませていく。
各企業には、これまでの文化があり、慣習があり、常識がある。それは素晴らしいと共に厄介な側面を併せ持っている。何故ならば社員がその文化・慣習・常識のトライアングルに浸りきっていると時折、病気に罹る人達が出てくるからだ。 「私は非常識を嫌います、リスクを嫌います、変化を嫌います」。曰く 3大嫌い症候群である。
導入初期においては、どうか“知的野人である(であるはずの)コンサルタント”が発信するこれまでとは異なる見識を真正面から受け止めていただきたい。 必ずやダイバーシティの如く多様なるものから何かが芽生え、現状を打開していくための新しい方法論が議論され始めるであろう。1年目はコンサルタントの圧倒的な異質が機能する。 これまで常識としていた発想や、組織であるが故の遠慮、しがらみの類がことごとく破壊されていく事が予見できる。トップの改革断行の情熱が様々な形を取りながらも具体行動としてまな板の上で料理され始めるのだ。素敵なことだと思う。
2年目のコンサルタントは、既に企業にとって圧倒的な異質性ではない。この事が重要である。導入初期の異文化が企業内に取り込まれ、自然と最適な形の組織風土が醸成されてくるからだ。 企業はコンサルタントから新しい思考方法やノウハウを吸収し、コンサルタントは指導を通じて企業の特性を熟知する。そして、次なる企業改革の世界を模索し始める。弁証法的発展により、双方の影響が融合して平衡状態になる事が望ましい。 続く3年目のコンサルタント活用は実に単純だ。企業はコンサルタントの全てを吸収しきれば良い。コンサルタントが干からびるまで利用すれば良い。この頃には企業もコンサルタントを働かせるツボを感得できている。
3年間でコンサルタントの全てを吸収する、これを目標にコンサルタントをフルにご活用いただきたい。この3年間で、当初は圧倒的な異質物であったコンサルタントは、既に企業と同化している、つまりは新しい企業風土に変質したのである。 経営トップはこの事に留意され、お雇いになったコンサルタントに接していただきたい。
課題は、3年目から以降である。
(2)活動は、「大○○活動」と命名していただきたい
企業の裏も表も熟知し、数値実績を創出し、かつ未来創造に向ける戦略を立て始めているコンサルタントを3年目で放出する事は得策では無いように思う。ご投資いただいた費用の数十倍をきちんと果実として刈り取る季節はこれからかもしれない。なかなか成果が出なかった、一部の社員の意識が変わっていない、あと少し出力が欲しかった、など、ご不満に感じられる部分もあるかもしれない。 しかし、これからが大輪の花を咲かす絶好の機会である。
唯一無二のコツをお伝えする。どうかメモしていただきたい。どうせ外部を活用するならば、
この取り組みを「 工場改革のマネジメントの一環 」と位置付ける!
と、意志を明確化するべきである。
テクノ経営のコンサルタントをご活用の場合、単一目的での取り組みはお勧めしない。例えば、QCサークルやTPM推進のフォロー、あるいは提案制度の充実など。 どの取り組みも有意義かつ重要ではあるが、個々の活動に限定してしまうと、我々コンサルタントの良さを十二分に活用しきれないように感じる。
テクノ経営のコンサルタントは、その実践経験の多さから、現場改善を全社改革に発展させる器用さを持っている。だからこそ我々には各企業における改革課題の全てをぶつけていただきたい。 遠慮無しに難題をぶつけられたコンサルタントは当初は勿論、途方に暮れる。場合によってはパニックを起こすかもしれない。しかし心配には及ばない。コンサルタントはこれまでの数々の経験や実績という糧がある。 確かにクライアント企業にご満足いただけたという事実と認識がある。そして何よりもコンサルタント達が踏ん張りの拠り所とするのは、クライアントの「何とかしなければ」というご意志である。
我々は経営トップの想いを実現するために存在している。我々の任務は工場改革を果たす事にある。そして我々の使命は日本のモノ作り文化を発展・進化させ未来につなげて行くという、各企業様の想い実現のご支援をさせていただく事である。
熱い想いで、崇高な志で、共に改革を実践していきたい。各クライアント企業様には無上の達成感を得ていただきたい。達成感を得る要件はわずか3つである。
1.数値目標をクリアする
2.全員が全力を出し切る
3.変化がはっきりしている
である。
今後もどうか宜しくお願いいたします。
<< 結 語 >>
これまでのコラムを通じて、企業改革の成否を分ける条件についてお話してきました。いまや日本のモノづくりは世界を視野に入れた環境の中にあります。迅速な意志決定や部門間の連携なくしては厳しい国際競争に打ち勝つことはできません。 海外投資や生産比率が年々上昇を続ける今、国内・海外市場をトータルでとらえるには、今までにはない企業文化と連携体制の再構築が求められます。そこで必要となってくるのが全社的なベクトルを持った企業改革の推進です。。
コラムでもお話したように、上意下達の役割をになうミドルマネジメント強化は極めて重要です。筆者を含むテクノ経営のコンサルタントは、あらゆるモノづくり現場で成果を生み出す企業改革の支援を行っています。 私たちは、コンサルティング場面を通じて、皆さまとお目にかかる日を心待ちにしております。
今回のコラムが企業改革のご参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。貴社のご発展を祈念して一先ず筆をおきたく思います。