はじめに
今までのコラムを通じて、海外の生産拠点におけるローカル人材の活性化についてお話してきました。 最終回の本コラムでは、「気付き発掘活動」から改善活動への展開で、生産性が大きく改善された国内事例をご紹介いたします。
1.国内事例: A社 「気づき発掘活動」から「MAP-5」へステップアップ
※「MAP-5」…動画活用により問題発見力を養う、テクノ経営のオリジナル・トレーニング・プログラム
<<改善効果>>
・700件以上の「気付き」を発掘
⇒ 「問題棚卸表」で一覧化、優先順位により改善実行
・組立工程の生産性25%アップ(人員配置の見直し、簡単な治具の作成
⇒ 社内の改善活動、初年度の実績、生産性30%アップに匹敵する数値
・社内コミュニケーションの改善(従業員・請負会社を巻き込んだ活動)
⇒ 社員と請負会社従業員、直接と間接部門の垣根を超えた交流が生まれる
協業活動による、改善の風土づくりに大きく貢献
・第三者の視点、視線による観察の効果
⇒ 普段、交流のない事務職の女性による、鋭い気づきが連発
その中から作業改善につながる事例も多数あり
★対象は製造部門275名、間接部門33名の約300名余り、全社で「気付き発掘活動」を展開しました。当初は、コンサルタント主導で 取組みを開始しましたが、2ヶ月目以降は自主活動として推進できるようになりました。「気付き」を通じて、改善の取組みに対する 意欲が喚起され、改善チームリーダーが自ら進行役となって活動を推進するようになったのです。その後、週一回のペースで活動を 定期開催。これを1年間継続して実行して行きました。
2.国内事例: B社 改善活動のスタートを前に、自主的に「気づき発掘活動」を全従業員で実行
<<改善効果>>
・「気付き」500件
⇒ 「問題棚卸表」を改善活動のスタート前に作成完了
・「問題棚卸表」に優先順位をつけて、各改善チームに配分
⇒ 改善活動の開始後に取組み開始
・不安全に対する事項を最優先して、改善を実行
★このケースでは、改善活動がスタートする時点で、全員参加改善活動に対する、従業員の意識付けができており、準備期間を当初予定の3ケ月から1.5ヶ月に短縮することができた。
3.海外事例(タイ): C社 「気づき発掘キャンペーン」開催
~全社展開の取組み姿勢をローカル従業員にアピール!~
<<改善効果>>
・「気付き」提出件数を基準に表彰(報奨金と表彰状、盾など・・)個人とチームの両方に対して実行
・ローカル従業員のモチベーションアップは、報奨より名誉(トップからの直接報奨が非常に効果的)
・お祭り、イベント好きのタイ人の気質を考えても、キャンペーンは非常に効果的
4.海外事例(タイ): D社 「気付き」集計から、3S活動と連携、不安全箇所の徹底対策を活動準備期に実施
<<改善効果>>
・全員で改善に取り組み、見違えるような工程に変身させることに成功
・改善対象メンバーだけでなく全員が一緒になって改善に取組む体験が大きな目的
・準備期間中に目で見える変化、効果を見える化できた(その後の改善に対する動機付けにも成功)
・チームリーダーへの実践指導として、協業による改善の成功体験を積ませる効果が得られた
★この企業では、「気づき」の中から、あえてキツイ作業を一つピックアップして、その作業を改善対象とする、これを チームリーダー達の課題として、彼らに協働で改善を実行させました。その結果、職場の意識改革に成功しています。 準備期間において、キツイ作業を一つでも、改善できれば、従業員の改善活動に対する意識は必ず変わります。このように、 「気づき発掘活動、Finding-Activity」そしてMAP-5 は、改善活動の開始前(準備期間)に実施すると効果的です。運営に関しては、 経営幹部、専任リーダー、各メンバーが連携して、ベクトルを合わせ、『改善活動の風土・基盤づくり』を進めていきます。
日本人社長、スタッフからの感想の声
「現場の従業員が、日々の生産活動で直面している、困り事を拾い上げる気づき発掘活動は、期待以上の件数の提出もさることながら、 全従業員が気づきメモを提出するといった、事実に対して、正直驚いている」
「半分近くは、愚痴や実現不可能なことが含まれているが、残りの半分近くは改善のネタを含んでいる。そして、我々日本人スタッフが 気づいていなかった、不安全箇所 ・キツイ作業 ・設備のトラブル ・重複作業のムダ ・作業改善のネタが気づきに含まれていることに 驚くと同時に、ローカル従業員にも、これだけの能力があったのかと再認識した」
「準備期間で、気づきから、改善実行までを行う、この取組みは、彼らの改善活動に対する意識付けには大きな効果があった、気づき キャンペーンに関しても、期待以上の盛り上がりがあり、あらためてタイ人の気質をしることができた。そして、褒めて伸ばすことの 重要性を知ることができた」
まとめとして・・・・
今回は、海外工場における改善の風土づくりについてお話してきました。コラムを通じて、ローカル人材の意識変革には 準備期間の重要性を繰り返し申し上げました。
ローカルとの接点では、具体的なアクションが何より大切です。相手の目線に合わせた活動、ローカルの自発性を引出す 雰囲気づくり、日本人の混成部隊による改善の取組み、などが必ず相手の心を開きます。こうした活動を通して、コトバや 文化の壁を越えたコミュニケーションが成立つものと思います。
初回でもお話ししましたが、「気付き発掘活動」は、本格的なVPM改善に取り組む前のウォーミングアップとして、 職場の風土づくりにたいへん効果的な活動です。今回のコラムは、海外工場を中心にお話してまいりましたが、「気付き発掘活動」の 展開は、国内・海外を問いません。職場の問題発見をゲーム感覚で盛り上げていくことが重要なポイントです。
テクノ経営総合研究所では、このように、準備期間に活動開始に向けた「風土づくり・基盤づくり」をお奨めしています。 今回ご紹介した取組み以外にも、改善の風土づくりを進める「MAP-5:問題発見力トレーニング」などのプログラムもご用意しております。 海外はもとより国内でも、活動メンバーの意識を変える「気付き発掘活動」、ご参考になれば幸いです。