職場風土の問題が不祥事を引き起こす
人が集まり組織ができると暗黙のルールや決まりが生まれてきますが、それらが足枷となって組織の成長や生産性を損なうことがあります。
たとえば失敗を認めない企業体質、上下関係が厳しい職場風土では、部下が失敗を隠蔽する習慣が生まれがちです。
部下から失敗などの悪い報告を受けて頭ごなしに叱った。こんな経験はありませんか。
しかし冷静に考えれば良い報告よりも悪い報告の方が数倍重要です。
なぜならば、それは一刻を争う問題かもしれません。いち早く知ったことで、起こっている問題に迅速に対処できるだけでなく、「なぜ失敗したのか」「何が問題なのか」という原因追究により、前向きな今後の対策を検討することができるからです。それが組織の成長や発展に寄与することは言うまでもありません。
ところが部下の失敗を厳しく叱責しすぎると、次からは悪い報告があがってこなくなる可能性があります。自分自身の評価が下がること、嫌われること、怒られることを極端に避け失敗を隠す職場体質が出来上がってくるのです。
自らの失敗を上司に報告すれば叱られるからと問題を放置したため、重大なクレームに発展してしまったケースが過去に報道された企業不祥事の要因にもありました。
自由な意見が言える職場づくり
人間心理学のアブラハム・マズローは、「欲求五段階説」で、人間の欲求を低次から高次までの5段階に分けて説明しました。
そこでは基本的な2つの低次の欲求が満たされることで、個人の社会性から自己実現に至る高いレベルの成長が実現されると説いています。
■マズローの欲求五段階説
低次の欲求とは、まず生存欲求そして安全の欲求です。つまり人は自由と安全が確保されてこそ、次の段階である社会参加により自己の能力を発揮できる段階に入ることができるということです。
これを組織に当てはめれば、良いも悪いも自由に意思疎通できる職場であってこそメンバーの成長も期待できるということとになります。
それを証明する一つの例が世界的な組織であるグーグルの社内調査で見られました。
グーグルには数多くの組織がありますが、チームの生産性にはバラツキがありました。そこで生産性の高いチームの特色を調査したところ、メンバーの能力よりも「心理的安全性」の高いチームが高いパフォーマンスを発揮して実績を出していることがわかりました。
つまり成功も失敗も安心して各メンバーが自分自身の意見を言える風土。それがチームのコミュニケーションを促進し、自然に上手くいく雰囲気を育んでいることがわかりました。
コロナ以後、テレワークや在宅勤務などの働き方の変化により、リーダーシップのあり方も大きく変わりつつあります。
風通しのよいコミュニケーションにより、悪い報告をも許容できる職場風土づくりがいまこそ必要ではないでしょうか。