コラム/海外レポート

2021.03.22

将来を強くイメージする「フューチャーペーシング」で変化に対応する意識を育てる

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執筆者:

伴 浩和

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コロナ禍の状況下でよく見聞きするのが「ピンチをチャンスに変える」というフレーズ。だが実際にはピンチとチャンスはイコールではないし、そのままにしておけばピンチはピンチのままで、決してチャンスにはならない。それでもピンチをチャンスに変えたいのであれば、やはり何かを変えなければならない。例えば「仕事を」「やり方を」「スピードを」「判断基準を」変えることが必要となる。この時期でも利益を出せている企業は現在の延長線で将来の経営を考えることが出来るが、収益が厳しくなっており生産性1.5倍というような高い目標に取組むことが必要となっている企業もある。今後コロナウイルスのワクチン接種が拡大して、ある程度ウイルスの押さえ込みが出来た時、企業間では将来に向けた対応において大きな差が出てくるだろう。

さて日本の人口推移に関する将来の動向を見ると、2030年には総人口が約6%減少し、2045年には約16%減少する。労働人口は2030年には約10%減少し、2045年には約26%減少する。これは現在100人の工場であれば、2045年には75人で生産することが求められていることを示しており、生産性でいうとおよそ現在の1.3~1.4倍に相当する。そしてこの未来の状況というのはおおよそ既に決まっているものであり、現在コロナ禍で足元の消費が落ち込んでいる状況というのは、まさにこの将来の想定がタイムスリップして今やって来たという風に捉えることができる。そういう意味から待ったなしの状況といえる現在において、将来を強くイメージし、変化への意識を育成することに有効な「フューチャーペーシング」という方法を紹介したい。フューチャーペーシングとは簡単に言うと、「将来のありたい理想像」に現在の姿をあわせて行く方法で、やり方としては現場の管理監督者や次世代のリーダー候補などが集まって、1人10分程度の時間で自社の将来の姿をイメージして話をする機会を定期的に設定する。繰り返し話をすることで、1回目は3分程度しか話せなかったものが、2回目、3回目になるとかなり具体的なイメージで話せるようになってくる。ここで大事なことは現場を牽引している管理監督者の方が目の前の仕事だけでなく、会社の将来の利益、将来のビジョンなどをどうイメージするかということ。これは企業にとって本来すごく重要なことだが、普段現場の最前線でなかなかこのようなことを考える時間を個人では取れないため、会社の取組みとしてこういう機会を定期的に設定し、管理監督者の先を見通した考え、行動というものにつなげていくことが必要となる。このような取組みを通じて、今回のコロナが収束した1、2年後に別の新種のウイルスが流行したらどうするか?そういったことへの対応なども具体化していけるのだ。またこの方法の面白いところは5年後、10年後、15年後という未来を視覚的に体感できるところで、具体的な方法としては、参加者全員で将来の検討をしたあと、床にビニールテープなどを使って矢印を貼り、その中に5年、10年、15年というような間隔で線を引いていく。そして例えば15年の線の端から現在を見て、15年先の自分から現在の自分に対して、今のことだけでなくて、将来を見据えて今何をすべきかのアドバイスを検討結果にもとづいて行う。この方法はよりリアルに未来をイメージすることができるので、ピンチをチャンスに変えるため、色んな環境変化に柔軟に対応するため、いかに変化を予測していかに先手を打つかという意識を育成するために非常に有効な方法だ。
経営幹部や会社経営に関る部署の方は当然常に先のことを考えながら仕事をされているが、現場の管理監督者、特にベテランが退職して若い社員が現場の責任者として入られている場合、要求されるスピード感や情報量の多さから、なかなか現場に出る時間も取れない場合があると思う。そのような状況ではどうしても目の前の仕事だけにとらわれがちになるため、ぜひこの「フューチャーペーシング」を取り入れて、先を見据えて考える習慣を身に付けて欲しい。

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