株式会社日本カメラ社は4月15日、月刊誌「日本カメラ」の休刊を発表した。4月20日発売の2021年5月号(通巻964号)が最終号となる。同誌は1948年10月の「アマチュア写真叢書」を1950年3月に「日本カメラ」と改題して創刊。カメラの最新情報、写真家の作品紹介、写真コンテストなどを実施してきた。休刊の理由は、雑誌媒体の出版を継続することが困難になったためと説明している。「日本カメラ」は朝日新聞社が発刊していた「アサヒカメラ」とともに、カメラ雑誌の2巨頭として君臨し続けてきたが、その「アサヒカメラ」も2020年6月19日発売の同年7月号をもって休刊しており、日本カメラはカメラ雑誌唯一の巨頭となっていた。雑誌不況が叫ばれて久しいが、状況は年々深刻さを増すばかりだ。2020年は100冊を超える雑誌が休刊になり、比較的不況に強いと言われた医学・医療系など専門性の高い雑誌も軒並み、窮地に陥っている。技術的・専門的な情報は日々の進歩に沿ってアップデートされることが理想だが、その意味からも紙媒体の雑誌よりネットメディアに優位性があることは覆しがたい事実だ。これまで雑誌の発刊を支えてきたライターや写真家もウェブやネット動画に活躍の場を移すケースが目立っており、雑誌広告を出稿してきたメーカーもYoutubeなどの動画配信サイトへの関心を高めている状況だ。
一方カメラ市場に目を向けると、こちらでも厳しい状況となっていることがわかる。デジタルカメラの出荷台数は年々減少し続けていて、コロナ禍以前から前年同月比2~3割減の水準で推移していたところに新型コロナ影響が追い打ちをかけた。2020年3月の出荷台数は前年同月比で5割以上落ち込み、5月には前年同月比72.6%減の36万9730台にまで落ち込んだ。これらの影響からデジタルカメラの出荷台数はピークだった2010年の1億2146万台から2020年は888万台と14分の1にまで落ち込み、レンズを含めた総出荷金額は2008年の2兆5132億円から2020年の6725億円へ、約73%減少した。
業界再編の動きも加速している。2020年6月24日にはオリンパスがデジタルカメラを中心とする映像事業を分社化し、投資ファンドへ売却することを発表。1936年以来、創業期のオリンパスを支えたカメラ事業から撤退することになった。手軽に撮影できるスマートフォンが急拡大し、そのあおりを受けてデジタルカメラの需要が急減したのは確かだ。しかし一方で販売を従来から使い続けている固定層だけに頼り続けていては各メーカーのカメラ事業が先細りしていくことは明白だ。コロナ禍以降の不確実性の時代において、さまざまな分野で価値観が変わりつつある中、各メーカーではスマートフォンとの比較において競争優位性を持ち、ユーザーを限定しないカメラを開発することが最重要課題であり、その解決に向けた道のりは極めて困難なように思える。