最近DXという言葉をよく耳にする。たとえば「アフターコロナで必要になるDX」「これからの時代のDX戦略とは」など、こんな新聞や雑誌記事を目にしない日はない。一方でDX事業を立ち上げ、売り込みを始める企業もどんどん増えてきた。経済産業省もレポートを発表してDXの本格的な展開を促している。
でも、そもそもDXって何なのか?従来のIT化とどう違うのか?そこを考えてみたい。
まずITとは文字通り情報技術のこと、ネットワークを駆使してデジタル化で社会の利便性を高めていくテクノロジーのことだ。ここでデジタル化という言葉がでたが、DXの本質は何かというと、ITによるデジタル化を実現することで、従来のビジネスモデルや企業組織を変革することを目指す。
IT化とはデジタル技術により生産性や業務効率化を追究するものだが、DXはITを手段と考えて企業変革を進めていく方法である。
DXの提唱者、ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授も、DXを一言で表現すると「デジタルによる変革」だといっているが、つまりデジタル技術で新たなサービスやビジネスモデルを展開し、働き方改革や社会変革を実現することが目的だ。
新型コロナの影響でテレワークやシステム活用が一般的になり、企業のデジタル技術に対する意識も変わってきた。最初はやらざるを得ない状況だったが、実際にやってみると新たな発見や気づきがあり、デジタル技術の有効性が理解された結果、ペーパーレスや電子ハンコ、会議システム。オンライン営業、リアル店舗のEC化など、従来のスタンダードがデジタル技術にだんだん置き換わるようになった。
また、どうしてもDXが必要になる状況がある、それが2025年問題だ。総務省の統計では、2025年に75歳以上の高齢者の人口が約2200万人になる予想。その結果、不足する労働力は583万人に上ると予測されている。
経済産業省が出したDXレポートでは「2025年の崖」という表現が飛び出した。この崖とは、基幹システムを作ったエンジニアがすでに退職しブラックボックスと化したレガシーシステムだけが残される状況を示している。
過剰にカスタマイズされることで複雑・肥大化したシステムを理解できる人は社内にいない。また、基幹システムの内部構造が分からないのでトラブル発生時の対応には多大な時間がかかるだけでなく、本来の業務が停止しトラブル対応がたいへん。
システムをどうにかしたくても、一度触れれば何が起こるか分からないので手がつけられない。こういう状況に陥る前にDX改革を進めてくださいというのが趣旨だ。
経済産業省によれば、もしこのまま放置すると年間で約12兆円もの経済損失が発生するという。これが2025年というターニングポイントを取り巻く状況だ。
このように目前に迫る2025年問題を前にして、システムの刷新を含むDX推進が課題となり、リスク回避の対応が急がれているのである。