コラム/海外レポート

2021.12.06

クラフトビールにみる大手酒造メーカーの戦略とは?

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若者世代の「ビール離れ」が広まり、かつこの度のコロナ禍における飲食店の営業自粛。コロナ禍以前からマイナス基調にあったビール市場ではあるが、この逆風を受けて新しい方向性で復権を目指す動きが出てきている。
昨今の健康志向を受けて、プリン体や糖質、カロリーを抑えた銘柄を大手各社が続々とリリースし、それらは消費者の一定の支持を受けて定着しつつある。
そしてビールの多様化の流れは、さらに広がりを見せている。
「クラフトビール」と呼ばれるものである。
本来クラフトビールとは、その言葉の意味する通り、小さな醸造所が厳選した原料で独自のレシピに基づき少数を製造するまさにクラフトマンシップに溢れたビールを指していた。醸造所の所在する地域にちなんだ原料や製法にこだわる「地ビール」と言われるものもそれにあたる。
そんなクラフトビールという名称を冠した商品を、本来の意味するものとは逆に大手酒造メーカーが手掛け、大量生産することにより、クラフトビールが一つのジャンルとして定着しはじめ好調な売れ行きを記録している。
キリンビールにサッポロビール、サントリーにもそれぞれクラフトビールというジャンル名を冠する商品が存在する。
これら商品の支持層は、冒頭で取り上げた「ビール離れをしている」若年層といわれており、そこには若者のビールの飲み方、楽しみ方自体の変遷がある。
クラフトビールを愛飲するユーザーは、居酒屋店で生ビールのジョッキを豪快にあおるという飲み方ではなく、珍しいクラフトビールのタップを揃える雰囲気のいいビアバーや自宅で、ゆっくりと少しずつ、お気に入りのビールを味わいたいという嗜好を持っている層だといわれている。それが昨今の「家飲み」という事象とリンクし、ヒット商品となっているのだ。
そう考えると若者の「ビール離れ」とは、飲まない・飲めない層の増加ではなく「飲みたくなるビール」がなかっただけだとも考えられるのである。
これは、ものを違えれば製造業一般にも似たような事例があるように思われる。ニーズが減った、時勢が動き売れ行きが低迷している、そんな状況の中で視点を変えることができれば、ともするとそれが契機となり新たな活路が開かれる可能性を、クラフトビール市場の好況は教えているのかもしれない。
アルコール度数を抑えた「微アルコール」が売りの商品も誕生しているが、これも飲み方の多様性を見込んだ展開である。
社会情勢や市場に逆風が吹くときこそ、攻めのマーケット開拓や企画の実行、そしてそれを実現するための会社・業務改革を推し進めていくべきだと考えられるのである。

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