2022年に入り、タイでも新型コロナウイルス感染の再拡大となってきた。
改めて、社員以外の工場への立入り制限を継続する日系企業も散見される。
タイ政府もこれまでの様に、ロックダウンや入出県制限などを強化する事はなく、コロナと共生していく為に、開国に向けて進んできている。2022年4月1日からは、入国の制限が少し緩和され、PCR検査の陰性証明が不要となるなど、観光立国としてのタイを取り戻す方向へ動き出した。現時点(3月18日発表)で本決まりではないが、7月からの完全開国へ移行する方向へ走り出した。コロナを風土病に指定し、入国制限を完全撤廃する方向となった。2021年の年末ごろからは、入国制限の緩和により、外国人(欧米系)の入国が増えてきており、スクンビット通り近辺でも、欧米系の観光客が増加してきていた。
さて、タイ経済に目を向けると、コロナ禍以前には、タイの観光産業はGDPの14 %を占めていたが、この2年間の鎖国状態で壊滅的打撃を受けた。ホアヒンやパタヤなど外国人観光客の多かったリゾート地では、お土産物屋、飲食店などの多くが倒産、閉鎖を余儀なくされ、ホテルなども多くが閉鎖された。実際にホアヒンやパタヤへも行ったが、コロナ前の賑わいは皆無であり、まるでゴーストタウンの様だった。
特にパタヤは、ビーチロード、セカンドロード周辺のホテルやお土産物屋、ビアバーなどが軒並み倒産や閉鎖され、そこで働いていた人達も田舎へ戻らざるを得ない状況だった。ホームレスも増加し、治安の悪化も囁かれている。
7月の完全開国に向けて、日系企業でも少しずつではあるが動きが出てきた。コロナ禍以降凍結されていた、人事異動が2021年10月頃から始まった。特に2022年3月現在、これまで凍結していた社長格の人事異動が頻繁に行われるようになってきた。
一方で企業経営の状況はどうかというと、原材料費の上昇が急激に進み、企業努力だけでは抑えきれなくなり、製品価格に転嫁せざるを得なくなってきた。これに追い打ちをかけたのは、半導体不足とコンテナ不足による物流費の高騰、ロシアのウクライナ侵攻である。
コンテナ不足に関しては、2021年の夏ごろには解消の見通しがあったが、現時点でもコンテナの動きが悪く予定通りに物流が動いていないというのを耳にする。
こうした状況のため、工場でも生産量の低下や、部品の未入荷による生産計画の組み換えが頻繁に起きており混乱している。こうした状況を回避すべく、企業の経営者はかなり苦労しているのが現状だ。ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が短期間に高騰した。コロナ期間中は、ガソリン価格は20~25THB/L前半だったが、現在では39THB/Lまで上昇している。これは物流費へも転嫁される。
さて、弊社では2022年に入り、会場セミナーを再開したが、お客様からは、なかなか会場開催のセミナーへの参加を躊躇されているという声を聞く。
実際に参加されたお客様からは、リモートセミナーやオンデマンドセミナーの要望も多く聞かれている。
『もし自身がコロナに感染したら、工場がストップしてしまうので、セミナーに行きたくても行けない』という話もあったぐらいだ。
日本本社からの指示や、タイ人幹部からの要請など、その原因はさまざまであるが、一歩踏み出し、あらたなステージに進む為には、タイ政府の完全開国宣言を待たざるを得ないのかもしれない。
タイ人幹部の育成はこの2年間停滞していたが、2022年に入り、いよいよ待ったなしの感も出てきている。バーツショック以降にタイに進出した企業では、そのころに入社した社員の退職時期に掛かっている為だ。この頃入社した人材は、マネージャーやGMなど企業幹部が多く、これらの人材の後継者育成が上手く進んでいなかった為だ。特にこの2年間は人の出入りを制限していた関係で、人材育成もストップしていたからだ。これから、日系企業では管理職の後継者育成が企業経営の課題になってくるだろう。
企業経営者には、今すぐにでも取り組むべき企業の課題として認識しておかなければならない。