コラム/海外レポート

2023.02.20

「永遠の課題:タイ人を育成する」

関連タグ:
  • タイ

執筆者:

山本 信幸

SNSで記事をシェアする:

  • LINE

前回は「タイ人と付合う」という内容で

1. つかず離れず‼ 2.信じて疑え‼ 3.長い目で見る‼

についてタイで得た経験をもとに私の独善的な教訓を紹介させていただきました。
今回はタイで仕事をされている日系企業の経営層を含めた駐在者の方々の多くが常にトップの課題として取り上げられる「タイ人を育成する」について前回同様私の独善的な見解を紹介いたしたいと思います。

1. なぜ「タイ人を育成する」がトップの課題になるかの背景の考察

私は今年でタイに来て仕事をしてから18年が経過いたします。しかしながら私の中では「タイ人を育成する」はトップの課題ではありません。理由は3つあります。

 1)教育水準が良くなり企業内での情報や固有技術の習得に多くの時間を必要としない
 2)一般常識や情報はスマートフォンの普及により個人レベルでもインターネットから習得できる
 3)個人に様々な情報を「タイ人を育成する」という名目で与え教育しても従業員が企業に定着するとは限らない

従って通常の企業活動の中で行う「タイ人を育成する」ことに関しては現状の範囲で十分であると思います。

2. もう1つの「タイ人を育成する」の内容についての考察

ここで日系企業の経営層を含めた駐在者の方々の多くが常にトップの課題として取り上げられるもう1つの「タイ人を育成する」について考えてみたいと思います。
皆さんが思い描くもう1つの「タイ人を育成する」ことの内容は次のようなことが一般的です。

 1)自ら進んで課題を見つけ効率を上げる
 2)物事の進め方は結果を想定して着実に実行する
 3)コミュニケーションをよくとりリーダーシップを発揮する

要するにタイの実情からはかなりかけ離れた欲張った育成の内容になっています。
これを成し遂げるためには

 1)きめの細かい計画と教育実施の維持・継続に膨大な時間が必要になる
 2)個人に様々な情報を与え教育しても従業員が企業に定着するとは限らない
 3)駐在員が短期間に変わり求める内容に一貫性がなくなってしまう

等のリスクがあり実施するには得策な方法でないことは明らかです。
そのような状況からたとえ20年たっても「タイ人を育成する」は人が定期的に入れ替わる日系企業の経営層を含めた駐在者の方々に根強く残っている課題となっていると思われ、人が入れ替わっても繰り返し出てくる課題になっています。

3. もう1つの「タイ人を育成する」を克服するにはどうするか

もう1つの「タイ人を育成する」内容の3つの項目を育成する「実践型の仕組み」を作りタイ人主体で運用することが必要です。

<基本的な考え方>
チームによるプロジェクト活動を展開し実践する中でもう1つの「タイ人を育成する」を仕組化します。

 1)自ら進んで課題を見つけ効率を上げる
 2)物事の進め方は結果を想定して着実に実行する
 3)コミュニケーションをよくとりリーダーシップを発揮する

上記3項目を習得するためのこのプロジェクト活動に期限はなく従業員を入れ替えて継続することを原則とするので日本人が入れ替わっても影響はされません。

<プロジェクトの詳細概要>
 1)各職場の代表で5~7名のチームを作る
 2)現場を中心に5~10チームを作る
 3)チームのメンバーはマネージャー、スーパーバイザー、リーダー、オペレーター
 4)プロジェクトリーダ(社長)、サブリーダー(工場長)、事務局、関連部署長
 5)2回/月各チーム:1時間の活動報告会を実施する。
 6)テーマについては各チームで決める

もう1つの「タイ人を育成する」ことを実現するために考え出した私の提案です。
すでにこのようなプロジェクト活動を定着させた事例も多くあります。
なおプロジェクト活動の基本的な考え方は弊社のVPM手法を使って仕組みづくりを実施しました。

ホームコラム/海外レポート海外ビジネス向けコラム「永遠の課題:タイ人を育成する」