コラム/海外レポート

2023.03.24

AIの進化とものづくり

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急速に進化しているAI

まるで人と会話しているような感じで質問に答えてもらったり、プログラムコードを作成したり、さらには詩や歌、短編小説といったクリエイティブまで。こうしたオリジナルのテキストを生成できる人工知能ツールが話題を呼んでいる。こうした機能を有したAIは以前からあったものの、マイクロソフトが発表した投資ニュースをはじめ、様々なメディアで取り上げられて注目を集めている。
少し記憶をさかのぼれば、囲碁や将棋といった人間とAIの対決、また2022年にはキーワードをもとに絵画のような画像を自動生成するAIのニュースを思い出す。自分たちの身近な例でいえば、スマートフォンに用いられている技術だろう。カメラが自動的にフォーカスされたり、ネットショッピングの閲覧や購買履歴から自動的にお勧めの商品が表示されたり、文字変換の予測表示が出たり、気づけば当たり前につかっているものもAIの技術が活かされている。
こうしたAIの技術は、製造業にどのような恩恵をもたらすのだろうか。

製造業におけるAIの活用

改めてAIについて記述すると、AIとは人工知能 (Artificial Intelligence) の略称で、人工的に構築された知能によってコンピューターを用いて人間が行うような知的作業を自律的に実行できる技術。例えば、自動運転車や音声認識などがその代表的な例となる。近年ではAIの発展に伴い、機械学習やディープラーニングといった技術が急速に進化し、高度なパターン認識や予測・分析が可能となってきた。
これらの技術を活用することで、製造業においても多くの問題解決や生産効率の向上が期待されている。以下にいくつか例を挙げてみる。

●生産プロセスの改善
AIを活用した像解析技術によって、生産ラインの不良品を選別するなどといった検品作業が可能になる。高い精度かつ自動的に行うことで、生産効率や品質の向上につなげることができる。また、データ分析によって製品の欠陥や不良品の原因を特定し、改善していくことも可能となる。

●作業の自動化
AIによる生産ラインの自動化によって人的ミスを減らし、製品の品質を一定レベルで維持し、生産効率や生産速度を向上することができる。データ分析を活用すれば生産ラインのボトルネックを特定~改善でき、予測分析を行うことで生産計画の最適化も可能となる。

●予知保全
AIを用いてリアルタイムで機械のセンサーデータや稼働状況の収集・分析を行い、異常な振る舞いを検知することで機械の状態を予測し、異常が検知された場合には適切なタイミングでメンテナンスや修理を行うことができる。また、運用データを分析することで、効率的なメンテナンスのタイミングや部品の寿命予測などが可能となり、不必要な部品の交換や余分なメンテナンスの負担を軽減し、生産性向上やコスト削減につなげることができる。

●新製品の開発
顧客ニーズをはじめ、需要予測や市場トレンドなどのデータをAIで分析し、新製品のコンセプトやデザインを作成する。また、製品開発の情報やデータをクラウド型AIプラットフォームに集約することで、関連する企業や部門間での情報共有や協業が促進され、開発プロセスの効率化や品質向上を図ることができる。

●コスト削減
品質管理の向上、メンテナンスの効率化、製造プロセスの改善、不良品の削減、サプライチェーンの最適化など、AIの技術はあらゆる場面において生産性や効率性、製造品質の向上につながり、コスト削減を実現することができる。

AIの活用における課題

一方で、AIの活用には課題もある。AIの学習データに偏りがあれば、当然正しい予測や判断を行うことはできないし、人間が行う高度な判断や対応が必要な場面においては、AIでの対応は難しい。さらに、AIを悪用してセキュリティの脆弱性をつくサーバー攻撃などといった脅威も考えられる。
最も大きな課題としては、AIなどのデジタル技術導入におけるノウハウや予算の不足、IT人材の不足といったものだろう。経済産業省が発表した「2022年版ものづくり白書」では、デジタル技術の導入や活用の課題として、約60%の企業が「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」、約40%の企業が「デジタル技術の活用にあたって先導的役割を果たすことのできる人材の不足」「デジタル技術導入にかかる予算の不足」を挙げている。
こうした課題に対し、技術導入についてはAIソリューションを提供しているベンダーに相談するのが一般的だろう。あるいは、経済産業省の公表資料*を参照、中小機構のAI関連の窓口へ相談といった方法も考えられる。コストや人材不足に関しては、事業再構築補助金をはじめ、人材開発支援助成金やものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金といった様々な制度を活用するのが有効な手段ではないだろうか。

*経済産業省「中小企業のAI活用促進について」
 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/AIutilization.html

AIは日本の将来に必要不可欠なテクノロジー

以前、AIの導入により約半分の雇用が奪われるといったニュースがメディアで取り上げられ、大きな話題となった。「AIによってなくなる仕事・なくならない仕事」などの情報が散見され、雇用に関する不安な声も聞かれた。しかし、日本では近い将来、少子高齢化や人口減少に伴い、何百万人、何千万人といった規模での労働力不足に陥る。AIの進化によって自動化、省人化が進めば、こうした事態を解消する手立ての1つになるかもしれない。人間にしかできない力を生かして新しい仕事を創出し、その中でAIが得意な分野、役割を拡げていく。そんな新たな社会の構図こそ、未来の日本に必要となるのではないだろうか。