経営幹部から現場のリーダーや作業者の方々に至るまで、「お悩み」や何らかのトラブルに際して「そもそもの問題は?」と問うと、「コミュニケーションが良くない」、「風通しが悪い」という言葉が出てきます。企業内では上下間や部門間において多くの人が関与することでもあり、もっと重きを置いて取り組む必要があると感じます。
ある企業での事例を挙げると、管理棟と工場が別棟で製造部門と管理部門が分かれており、内部でも「別棟は別会社」というくらい雰囲気の悪い時期がありました。聞き取りを行うと、(1)会話・対話が無く、通知・依頼ばかり (2)結果・結論しか伝えない (3)回答ではなく、応答・諾否で終わってしまう と、どう見てもうまくいくわけがないという状態でした。みんなが問題意識を持ちながらも、なぜ改善が進まないのでしょうか?
すぐに実践できることとして、「感謝の気持ちを言葉に表す」ことを提案してみました。メールや電話で、お互いに指示や依頼・お願いが山ほど行きかうけれど、誰も「感謝」を相手に伝えていない。仕事だからやって当たり前、それはそうなのですが「会話・対話」につなぐための接着剤として、「○○への対応、ありがとう。ところで・・・」とやってみてはどうか?ということです。
2か月後、すぐに変化が見られたのは現場の雰囲気でした。「通知」が「会話」に変わり始めたことで、決定事項以外にも「情報」のやり取りが始まり、単なる結果だけではなく「相談や協議」も実施できるようになり、メールが少々増えるという弊害は出ましたが、相互に情報のキャッチボールが行われ、話し方も刺々しさが減っていました。
6か月後、主任クラスから定期的な情報共有の場として工程会議開催が提案されました。顔を合わせて話をすることの有効性も認識してのことと思われます。現在も継続しており、生産・品質だけではなく社内における情報共有の場として重視され、重用されているとのことです。
また、経営幹部も驚いたのが社外クレームの減少です。これまで「他責」として相互に擦り付け合いをしていたのが、「自責」として改善意識が生まれてきた、その影響が最も大きいと考えられます。品質クレームは現場だけの問題ではなく、「会話・対話欠乏」という、より基本的なところにも原因が多いという事を忘れてはいけないと考えます。