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2024.06.11

自動化(ファクトリーオートメーション)の壁

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●注目を集める自動化(ファクトリーオートメーション)

近年、製造業における自動化への注目は増すばかりだ。労働力不足やコスト削減の必要性から、多くの企業が生産性向上のために自動化技術を導入している。しかしながら、全ての企業が順調に自動化を進めているわけではない。自動化には数々の壁が存在し、それを乗りこえるための戦略が求められる。

ハード面、ソフト面に分かれる工場の自動化(ファクトリーオートメーション)

一口に自動化といっても、その内容は多岐にわたる。受注から設計、生産、保管、配送など、それぞれの工程においてシステムやロボットなどを導入することにより自動化が実現できる。工場の自動化は、主にハード面、ソフト面の2つに分かれる。

■ハード面
産業用のロボットを用いて、負荷の大きい運搬作業や疲労が蓄積する単純作業などを人の代わりに行うことで、作業者の負担を軽減することができる。代表的なものは「垂直多関節ロボット」「スカラ(水平多関節)ロボット」「パラレルリンクロボット」「直交ロボット」の4種類となる。

■ソフト面
人では感知できない異常のセンサー検知、AI(人工知能)などを用いた生産システムや品質管理の効率化など、これまでは人の手作業や感覚で判断していたものの代替が可能となる。AIの進化に伴い、膨大なデータの蓄積から分析、またそのデータに基づいた予測など、製造業においてもさまざまな部分での活用が実現している。

自動化(ファクトリーオートメーション)の利点

製造業において自動化がもたらす利点は多岐にわたる。例えば、高度なロボット技術を導入することで、生産効率を大幅に向上させた事例もある。自動化は単に生産スピードを上げるだけでなく、品質の均一化にも貢献し、さらに従業員が危険な作業から解放され、安全性の向上も期待できる。

自動化(ファクトリーオートメーション)の壁

しかし、自動化の導入には、技術的および組織的な障壁が存在する。例えば、ある中小企業では、最新のロボットシステムを導入する際、既存の生産ラインとの統合が困難を極めた。また、技術的な知識やスキル不足により、スムーズな運用開始が実現できず、初期投資が無駄になってしまうといったリスクも存在している。組織的な部分では、自動化導入での大幅な変化に対する従業員の抵抗や不安が大きな壁となる。なんとか導入したとしても、新しいシステムに対する教育やトレーニングが不足すると、思うような生産性向上が達成できず、かえって低下してしまうこともあり得るだろう。

自動化(ファクトリーオートメーション)の成功事例

AIを活用した生産ラインの自動化。AIがリアルタイムで生産ラインを監視し、問題が発生した際には即座に対処する。このシステムによって生産効率を大幅に向上させ、品質向上も実現。また、生産ラインの完全自動化やAIによる機械トラブルの予知・予防も実現している。

自動化(ファクトリーオートメーション)の失敗事例

一方で、自動化システムの導入が失敗に終わった例もある。あるメーカーでは、そのシステムの複雑さと従業員の抵抗が原因で、運用開始までに予想以上の時間がかかり、コストが膨らむ結果になってしまった。その後、従業員の教育と簡易な自動化から始めることで、再度挑戦することとなった。その他、どうしても形だけを真似してしまうと、保守点検で逆に業務の増加につながる、点検修理に余計な予算が掛かるなど、結局、人が減らせず、コストも圧迫することになってしまう。

自動化導入の前に見直したい現状の把握と改善

労働力不足などによって安易に自動化へ舵を切ると、その労力やコストがムダになってしまうかもしれない。何もロボットやAIを導入せずとも、現場の5Sやライン配置などの変更、導線の見直しなどで2割~5割程度の生産性向上が見込める場合もある。まずは本当に自動化が最適な答えなのかどうか、現状を把握し、しっかりと見極めたい。自社で行うことが難しければ、外部の知見に頼ってもよいのではないだろうか。

自動化(ファクトリーオートメーション)の壁を乗りこえるための戦略

自動化の壁を乗りこえるためには、どういった対策が必要になるだろうか。これには技術的および組織的な対策が挙げられるだろう。

■技術的対策
初めは簡単な自動化から始める。スモールステップで導入し、その後、徐々にシステム全体へ広げていくことでリスクを最小限に抑えることが可能となる。さらに、既存の設備と新しいシステムをハイブリッドで運用し、徐々に完全自動化へと移行する戦略も考えられる。

■組織的対策
変革マネジメントの重要性から、従業員に対する継続的な教育プログラムを実施していく。新しいシステムの導入前に利点の理解を促進し、操作方法を習得しておくことで、作業者の抵抗や不安を最小限に抑えることができる。スキルアッププログラムも並行して行い、全体におけるスキルレベルの底上げも試みたい内容となる。

工場の自動化(ファクトリーオートメーション)における未来への展望

自動化の技術を積極的に取り入れることで、リアルタイムでの生産管理や予知保全の実現、生産効率の飛躍的な向上につながり、新たなビジネスチャンスも当然生まれてくるだろう。また、人手不足の解消はもちろん、属人的だった技能の継承を自動化で補うことも可能だ。運用や導入コスト、故障リスクなどの課題もあるが、享受できる恩恵も大きい。AIやIoT技術の発展とともにさらに加速していく自動化の進展に期待したい。

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