コラム/海外レポート

2024.10.18

「意識を変える」→「視点を変える」

関連タグ:
  • 現場改革・生産性向上
  • 間接部門改革

執筆者:

鳥取 一博

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 工場診断などで企業訪問時にインタビューを行う中、業務改善の一環として「改善活動に取り組んでいる」という話をよくお聞きします。実際に品質向上や生産性改善などの様々な取り組みに着手されており、インタビューではそうした活動の問題や悩みをお伺いすることも目的の一つですが、そもそも「従業員の問題意識が低い」という声も非常に多いと感じます。
 実際、テクノ経営が推進する改善活動の仕組み作りでも難度の高い項目だと思っています。私どもコンサルタントは改善の仕組みを各企業の問題に合わせて組立て、導入・定着させることをお手伝いするのですが、手法はお伝えできても肝心の問題を明確にすることができないままだと、まさしく画竜点睛を欠く状態になってしまいます。
 改善活動を成功させる要素として色々ポイントはあるのですが、そのうちの一つに、如何に具体的成果を急ごうとも置き去りにしてはいけないこととして「問題意識をすべての従業員レベルで高めること」があると考えています。従来からのもの、目新しいモノ、様々な手法で「意識改革」を訴えても当事者にその気が無いと始まりません。「困りごとや不便なことは無いか」と尋ねても、「慣れているから別に気にならない」という一言で終わってしまいます。明らかに無駄な動きや動作が目に付き、それを指摘しても、「いつものこと」と片づけられてしまう事も少なくありません。
 そんな時に、現場のリーダーと一緒に観察していると目の前で作業している人が急にどこかへ行ってしまいました。「(今いた人は)どこに行かれたんですか?」と聞くと、「多分ボルトかナットが足りなくなってきて取りに行ったんですよ」と答えがありました。賢明な皆さんはお気づきでしょう、「なぜ作業中にそんなものが不足するんだ?」と。その通りで、ここにも根深い問題が多く隠れているのですが、実際どこまで「取りに行く」のか、リーダーと一緒にその作業者の後を追うと、隣の部品庫に行ってあちこちの箱を開けたり棚をのぞいたりしています。「ね、やっぱり取りに来てますよ」とリーダーが説明してくれます。
 経験上、熟練作業者のほとんどがこの罠に落ちていると感じます。「これは、取りに来たのではなく、探しに来た」ですよ、と諭しました。
 端的な原因は「2Sが不十分なこと」ですが、日常化してしまっているために、「探す」行為そのものが手順の一つになって、「取りに行く」という行為の中に溶け込んでしまっていたのです。そのことを説明し、確認すると「思ってもみなかった、当たり前に考えていた」という答えが返ってきました。
 もちろん、作業者が途中で持ち場を離れるという行為そのものに問題があるのですが、いきなりそこを指摘しても理解されないでしょう。また、「探している」行動を目前にして説明したからこその納得だとも言えます。座学での知識だけでは変わらない意識、現場実践の重要性が改めて確認できる事象です。

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