コラム/海外レポート

2025.01.14

技術を因数分解し、新たな武器を手に入れる

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執筆者:

高橋 恒夫

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 私は“独創性を持って対処する”ということをモットーにしているのですが、コンサルタントに転身してからも変わらず心に留め、毎年一つ、何か新しいアイデアを出すという取り組みを続けています。

 今年は『技術を因数分解する』という手法に取り組んでいます。因数分解といえば中学生の数学で習う内容です。数字を細かく分けて素数にする素因数分解、あるいは展開された形の式を掛け算の要素に分ける因数分解、いずれかを指しますが、モノづくりにおける技術も同様に、実は細かく分けていくと詳細な要素の技術に分けていくことが可能です。こうした考え方をもとに、指導先である企業様の得意とする技術は何だろうか、他社にない飛び抜けた技術はないか、そういったことを一緒に探っていくという活動を進めています。

 現在、その『技術を因数分解する』という活動を私とご一緒に取り組んでおられる企業様は、売上高がグローバル連結で約2,000億近くの部品製造メーカーです。 当初はAPQP(先行製品品質計画)をなんとかしたいというご要望をいただき、コンサルティングをスタートさせていただきました。APQP(先行製品品質計画)とは、製品を作る最初の企画段階で、ものづくり側まですべての工程を考慮し、問題の無いようにしていくといった取り組みになっています。その企業様では、受注型製造のため、社内に製品企画のステージがなく、なかなかそういった対応ができておらず、APQPの仕組みの構築を実現してほしいということで活動を進めていきました。そもそも、その企業様には製品企画のベースとなる「技術のロードマップ」がなく、各技術者とご一緒にそのロードマップ作りに取り掛かりました。まず、自社の所有する各種技術の棚卸をし、武器となる技術を掘り起こすことから始めました。大きな製品におけるさまざまな部品を製造され、大手メーカー様に納品されているのですが、たとえ一つの部品であっても、他社に勝てる技術はどういった部分にあるのだろうか?、こうした疑問から始まっていきました。

 納品される部品はその製品を手掛けている大手メーカー様の製品企画にそって開発されたものになりますので、その製品の企画が頓挫すれば、開発した部品はすべて必要が無くなってしまいます。せっかく開発したのにもかかわらず、すぐに役目を終えて倉庫の片隅で眠ってしまう……。こうした案件をたくさん抱えておられ、年間でみるとかなりの数になっていました。このままではあまりにも勿体ないということで、もう一度、その技術を掘り起こすべく、現在も取り組んでいただいております。

 こうした技術の掘り起こしを進める中で、冒頭に少し触れた『技術を因数分解する』という手法を活用しています。例えば、ネジという部品を製造する場合で考えると、圧造や転造などのさまざまな技術が必要です。その技術を細かく分解し、それぞれの技術について自社の独自性や強みはどこあるのかを考え、ポートフォリオのような評価ツールを用いて分析していきます。取り組み始めた当初は、なかなか自社の良さが分からないといいますか、どの方もぽかんとされていたのですが、徐々に「この部分はうちの会社が優れている」「こういった部分はちょっと苦手かもしれない」ということが分かってきました。現在は、その分析をまとめて「将来はこの方向でいく」といった武器を作る、まさしく技術経営の根幹を成すところのお手伝いをさせていただいております。

 『技術の因数分解で方向性を導く』、ぜひ一度取り組んでみてはいかがでしょうか。もちろん、お声掛けいただけましたら、余すところなくこの手法を活用し、新たな武器を創出すべく、ご支援させていただきます。

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