コラム/海外レポート

2025.01.29

変化の激しい環境 改めて考えさせられるタイの労働環境

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執筆者:

高橋 隆二

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 皆さま、あけましておめでとうございます。本年も、宜しくお願い申し上げます。
 少し遅めの御挨拶で恐縮ですが、本コラムが2025年の最初ということでご容赦願います。
 さて、新たな年を迎え、それぞれ様々な想いもあるかと存じますが、今年の仕事始めに、あるお客様の所へ定期訪問すると、「いつもの会合時間を少し遅らせて欲しい」と申し出がありました。10分程度と聞きましたので快諾しましたが、理由を聞いて複雑な気持ちになりました。今年1月から最低賃金が引き上げられたので、関連部署に今後の対応を説明するとのこと。従業員を雇用する立場である企業にとっては非常に大変な今年の幕開けと実感させられました。
 地域毎に額は違うものの、日本と同様にタイでも最低賃金の引き上げが進み、今回の賃上げは10の県や都での実施、大きい地域では10%以上もの引き上げです(平均で約3%)。しかも政府から伝えられているのは、2027年までに600バーツ/日まで上げる計画とのこと。現状の最高額(400バーツ)でも驚きのレベルですが、まだまだ上げて行くことに頭を抱える経営者の方々も多いのではないでしょうか。
最低賃金の引き上げと聞けば、一般的には明るいニュースのように聞こえますが、それは賃金を支える環境が整っているという前提があってこそ。けっして良いとはいえない現在のタイ経済において、この大きな変化は痛手になるでしょう。
 しかし、先程のお客様は従業員への説明の中で、「法改定に沿って賃金が上がる人はもちろんいます、ただ、このような変化に対応する会社としての考え方は、より生産性を上げて行くことです。そして、ただ賃金を上げるのではなく、頑張った人にはより還元を、そうではない人には適切な評価の上、場合によっては下げることも視野に入れて人事制度を見直していきます」と説明されていました。こうした対応で技能や意識の向上につなげ、より成長する環境へと進化させていくことを掲げています。満点の答えです。
 タイ人には競争を好まず、平等意識が強いという特性があります。一方で、金銭に対する執着は強く、既得権を極端に主張する文化です。当社はこちらのお客様と長年の御付き合いをさせていただいており、マネジメント層は特に意識が高い企業様です。もちろん最初からではなく改革活動の賜物といっても過言ではありません。過去の努力を活かし、より成長を促す方針を国策に則って前向きに実行しようとするこの姿勢は称賛に値します。
 嘆いているだけでは何も変わらない。どんな変化にも素晴らしい経営ヴィジョンがあれば、必ず打破できますし、むしろ成長の機会になります。そういった企業様を支援させていただくというのは、改めて幸せなことだと感じました。
これを読んでくださっている皆様にも、何か感じていただければ尚幸いです。
ご拝読、ありがとうございました。

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