親会社への依存から脱却できず、自責で考える意識が欠如。経営的にも収益性が低下している。東北富士株式会社の安藤社長は、工場診断を職場改革の手がかりとすることを考えておられました。業務に対する真摯で勤勉な姿勢を持った一人ひとりの社員。しかし工場診断の結果、現場には数多くのムダが山積していました。
【背景と課題】
モノづくりの基本を再認識させたい!
当社は富士合成株式会社のグループ会社として、携帯電話機の外装・内装および、通信機部品・周辺機器部品などの精密プラスチック成形を行う会社です。高精度な製品を提供し続けるために最新の射出成形機を導入。金型製作から製造・加工まで、お客様のご要望に100%お応えできるモノづくりを目指して技術力の向上に日夜取り組んでいます。
テクノ経営との出会いは、2019年に宇都宮でのセミナーに参加した時でした。講師の話を聴いて人の意識改革に焦点を当てたVPMの考え方に共鳴すると共に関心を持ちました。
私は富士合成株式会社の専務取締役という役職にありますが、東北富士株式会社の社長も兼任しています。親会社にとっても重要な製造・加工を担当する東北富士株式会社の意識改革の重要性をまず認識していました。それでセミナー参加後に工場診断をお願いすることにしたのです。
東北富士株式会社は約20名程度の小さな会社です。しかも青森県の北津軽郡という遠隔地にある。ですから外部との接点がどうしても希薄になりがちです。現場改善という意識そのものが職場になく、モノづくりに関する教育を受けた経験もほとんどありません。小人数のためお互いに気心の知れた社内の雰囲気なのですが、富士合成株式会社から支給される仕事が約90%を占め、親会社に対する依存体質が強い。受注に対する心配をしなくても日々の仕事は上から与えられるため、どうしても危機感が乏しくなるわけです。納期対応でのクレームを恐れ、予め余分に製造する慣習があり、生産計画も曖昧でした。こうした社内の状況について、モノづくり改革のプロの視点で工場を見てもらうことにより、他社と比較して自社の現場レベルはどうなのか、それを社員の皆さんに認識してもらいたいと思いました。それが工場診断を決意した理由です。
【選定と導入】
工場改革から収益性の回復へ
いつも慣れ親しんだ職場環境で仕事をしていましたので、工場診断の結果は社員にとってもインパクトのあるものだったと思います。それまでは同規模の他社と比べて設備が充実しており、高い品質での顧客信頼を得ていること。また誠実な社風と社員モチベーションの高さが当社の強みであると考えてきました。しかし工場診断を受けて、それらの強みが十分に発揮されていないことに気づかされました。
診断結果では、黙々と作業を続ける加工や検査の職場が抱えるコミュニケーション不足、製造現場では、手待ちや空歩行が頻発し、段取り替えのロス発生、複雑な動線の工場レイアウトなどムダやムリが山積している有様が示されました。そして親会社への依存体質に対するリスク感覚が弱く、受託生産の新規開拓にも意欲が低いこと。そして最も重要な点は、それらに対する社員の気づきがないということでした。
多くの問題点が放置されたままの職場ですが、診断の報告会ではこれらを改善すれば大きな収益向上が得られるという 可能性が提示されました。業務の都合で月1回しか私は青森に来ることができません。
それで今までは工場長に任せきりだったのですが、工場改革にはコンサルタントの支援が必要だと思われました。これらの報告を受けて、コンサルティング導入による工場改革を進めることを決意しました。
当社の工場改革は「5Sと見える化」「生産性向上」「収益構造改革」を3つの課題として、活動実践による成功体験を得させると共に、人と設備の生産性を追究すること。造り過ぎのムダをなくし、適正在庫を維持できるようにすること。それらの施策により収益性を回復することを目標としました。
コンサルティングでは「経営会議」と言う枠を設定し、工場そのものをどう管理して導くかを工場長中心で運営し検討しています。私自身も毎週1回はオンラインで会議に参加するようにしています。当社には非常に素直な資質を持った社員が多いという強みがあります。ただ資質は良いとは言え、他責思考の傾向があり扱いづらい一面もあります。それらの課題をクリアしながら、これからも人材の強みを活かしながらモノづくり改善を実践していきたいと考えています。
テクノ経営総合研究所では今後も経営革新セミナー、1日工場診断を通じて、企業変革のきっかけをつくるための活動を推進してまいります。
(公開日:2021年7月26日)
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【工場診断事例】東北富士株式会社様
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