もともと改善に対する意欲の高い職場、多品種の製品を生産する岩手工場の設備や工程に潜むムダ・課題解決をはかるための体系的なレベルアップを求めておられました。
【背景と課題】
多品種を製造する 岩手工場の将来に向けて
金吾堂製菓は東京・中野区で1950年に創業。以来、伝統的な米菓づくりの製法にこだわりを持ちながら70年の歴史を歩んでまいりました。「まじめに、おいしいものづくり」が当社の企業理念です。若い方からご年配の方まで幅広い世代の皆さまに喜んでいただけることが私どもの願い。お米、水、醤油などの主原料を厳選しながら、安心・安全な米菓づくりを心掛けています。
首都圏を視野に展開を進める栃木工場では当社の定番商品である「厚焼」を製造。関連会社の岩手金吾堂(岩手工場)では「ほろほろ焼」や「パリッとタイムシリーズ」などを製造しています。栃木工場と比べ、多品種を製造する岩手工場では切り替えの頻度が高く、味付け、生地ともに異なる事から設備の清掃にも時間がかかります。
地元メンバーだけで工場運営を行うことが目指す姿ですが、岩手工場の課題は多い。主原料や物流費などのコストアップが進む中、製造現場のムダをどのように省いていくか。製造メンバーの技術面と管理面のスキルアップが求められていました。
常に課題解決のヒントを探してアンテナを張っていましたが、テクノ経営のセミナーで沢柳さんのお話を聞いて面白いなと感じました。そこで、テクノ経営の一日工場診断を受けることにしたのです。
【選定と導入】
最初は工場診断だけ受けるつもりだった
幹部教育や品質管理など、外部に研修を依頼した以外、当社には全社的なコンサルティング活用の経験がありません。それで体系的というよりは個別テーマで教わりたいという思いが強く、当初は工場診断後にコンサルティング導入するという考えはありませんでした。
ところが工場診断後の指摘を聞いて考え方が大きく変わりました。工場診断後の企画提案書の内容を見て「とてもこれだけの改善を社内で進めることは難しい」とのことでした。
特に包装工程の生産性向上、設備ロス削減などの提案を受けて心が動きました。岩手工場では昔から「現場の人間が自分たちでモノをつくって改善する」という社風があります。溶接作業のスキルを持った人材が豊富におり、彼らが真剣に改善活動に取り組めば、原料ロスや焼成の割れ削減など、難しい設備の課題にも取り組んでいけるのではないか。自分たちではムリな部分をコンサルタントの協力で進めればきっと成果が出せると思いました。若手人材の育成が課題となっていたこともあり、また「自分自身が抱える課題や工場自体でみんなが参加できるような雰囲気にしていきたい」という想いから、テクノ経営にコンサルティングをお願いすることにしました。
それが結果的にコンサルティング導入による改善活動が4年目を迎え、現在も継続していることを考えるとあの時の直観は正しかったと思います。それまでも目標を設定して自主改善をすすめていましたが、実際に活動に加わるのは限られたメンバーでした。社内の意識はそんなに低くはなかったのですが、もう少し打つ手がないかと考えていたところでした。
QーUP活動という活動名は各メンバーがアイデアを出し合って決めたものです。Qには、quality、quick、question、quantity(生産量)、給料など、いろいろな意味を持たせています。
1年目のテーマとして、まず取り組んだのが包装工程の効率化、原料ロスの削減。改善の進捗については効率の指標を入れたフォーマットで管理を始め、やがて「1日1万円」という共通言語であるお金で評価する方式に発展していきました。初年度から改善活動の成果が生まれ、特に包装工程の生産性は大きく向上しました。
活動4年目に入っても、取り組んでいることはずっとかわりません。最近では良品率の向上とロス削減をメインに、活動を通じての人材育成を進めています。
これからは、これまで以上に数字で結果がだせる取り組みにシフトしていきたいと考えています。数字として結果がでないと楽しく続けられなくなってしまうので、そこを注意しながらみんながヤル気を出せるような取り組みを工夫してやっていきたい。
まず結果をだしていくことが一番ですが、現場から「こういう取り組みをしてみたい」といった自発的な意見が出て、自発的にプロジェクトが立ち上がる状況を維持していきたい。
「品質が高くて安く作れる工場」であってこそ、お客様にも喜んでいただける企業になれると思います。それにプラスして従業員が前向きに働ける会社でありたい。そのためのQーUP活動だと考えています。
当社は「真面目においしいものづくりを通して、笑顔の絆をひろげます」という理念を掲げています。「笑顔」をキーワードに、お客さまと従業員に喜んでもらえること。それを体現し続ける会社でありたい。そのためには業績というものがついてくるので、そこをQーUP活動という形で取り組んでいる。我々が目指している姿に向かってみんなで動いていきたいと思っている。
当社の強みは、自分たちで考え、動くというクセができているところです。そこに正しい知識が引き合わされたとき、さらにすごい力を発揮できる思います。これからも自分たちの素質を磨きながら「考えて動く」組織づくりを進めていきます。
テクノ経営総合研究所では今後も経営革新セミナー、1日工場診断を通じて、企業変革のきっかけをつくるための活動を推進してまいります。
(公開日:2021年10月29日)
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【工場診断事例】岩手金吾堂様
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