地域経済の安定化を目指した社会的事業としてのスタート
加納氏:
昭和40年代から全国的にブロイラー事業が盛んになって来たことを背景として、住田町でも昭和46年に当時の住田町農協と地元農家5名でブロイラー事業を始めることになりました。当社創業当時、住田町の農家は出稼ぎ労働で冬場の収入を得る家庭が大半でした。
春から秋までは農業に従事し、冬は出稼ぎに行くという形でしたが、家長の不在で留守を預かる女性達が苦労し、また子供たちの健全な成長にも支障を来たしていたようです。そのような経緯も踏まえてこの地域で安定した雇用を創出し、社会的課題の解決を目指すため、施設型農業としてのブロイラー事業への参入が成されたと聞いています。また当初はきゅうりや苺などのハウス栽培事業も同時に行われており、このスタイルは「住田型農業」と呼ばれ全国的な話題にもなりましたが、結果的に現在はブロイラー事業が残る形となりました。創業時は住田ブロイラー株式会社という社名で創業したのですが、平成6年には現在の社名である住田フーズ株式会社に変更しました。平成9年には初めて直営農場を建設。翌平成10年には銘柄鶏「みちのく清流味わいどり」の生産・販売を開始しました。経営上の大きなターニングポイントは、平成14年2月に全農チキンフーズ株式会社の子会社となったことです。これによりJA全農グループの一員として新たな出発をする事となり、以降販売は全て親会社の全農チキンフーズ株式会社が担当し、当社は製造に注力する事業形態となりました。住田町ではこれまで、町おこしの一環として「鶏ハラミ」を地産グルメとして売り出したり、町内飲食店挙げての唐揚げのイベントを行ったりしていて、それらの活動にも当社は中核として関って来ました。当地は高齢化、過疎化が進む人口5,000人程の小さな町ですが、当社の事業には近隣の協力会社も含めて1,000人ほどの人々が関っていて、その人達の生活基盤を支えることも当社の重要な役割だと考えています。当社は来年創業50周年を迎えますが、この地域のためにもその先の100年も続く、永続的な企業を目指した経営を進めて行きたいと考えています。
コロナ禍の「巣ごもり需要」でチキンへの評価が向上
加納氏:
ブロイラー業界では本年度当初の予測として、過剰生産で相場が下がり、大変厳しい状況に陥るのではないかと言われていました。ところが今回のコロナ禍で行政から国民に対し「不要不急」の外出への自粛が要請され、飲食店の営業制限なども行われたことから、いわゆる「巣ごもり需要」が発生し、内食での家庭内調理が増えたことで、量販店などでは例年以上にチキンに対する需要が発生しました。一方、外食需要は前述のような要因で大幅に減少したのですが、そのマイナス分を含めてもトータルでは予想を上回る市況となっています。鶏肉相場的にも昨年よりも大幅に高く推移しており、ブロイラー業界としては、改めて社会に於ける当業界の存在意義を確信しているところです。コロナ禍で失業したり、収入が減少している方もおられて、今後の成り行きも不透明な状況の中、安価で高たんぱく・低カロリーの食材としてのチキンが改めて評価され、購入量が増加していると考えています。
中期計画実現に向けた改善活動の取組み
佐々木氏: 当社の中期計画は全農チキンフーズグループの「チャレンジ2023」中期3か年計画に基づくものです。2 023 年までの目標をグループ各社が設定する中、当社は生産会社として、現在年間890万羽の鶏を飼育・処理していますが、2023 年には1,000万羽まで増産する計画のもと、現在それに向けて色々な取組みを着々と進めているところです。現在2期目の活動中であるテクノ経営さんによるコンサルティング導入の理由としては、これまでお付き合いして来たコンサルティング会社の大半が座学中心だったのに対して、テクノ経営さんのコンサルティングは現場の仕事に対して、実践的な指導をしてもらえるということが決め手となりました。
加納氏:
活動スタート当初は参加社員も緊張気味でしたが、活動が進む中、徐々に打ち解け意識も向上しており、活動への取組みも主体的になって来ているように感じています。私は常々社員に対して、自分達は何のために仕事をしているのかということを考えて欲しいと思っています。自分達が作った商品が消費者の皆さんの元に届いて、「美味しいね」と言われるような商品作りをすることで、顧客満足度が向上して、他社との競争に打ち勝って行く力につながる。良い仕事をすることで、コストも下がり、会社が成長して行くというビジョンを各自が描きながら仕事に取り組んで欲しいと思っています。現在は未だそこまで思いが至っている社員は少ないと思いますが、この活動を通じてそういう社員が増えることで、その先に中期計画の実現が有ると考えています。
企業風土の改革が改善活動の重要テーマ
吉田氏: 当社の良いところは、地域に根ざしている会社ということもあり、社員がお互いのことを昔から良く知っており、家庭的な雰囲気が有るところですが、反面仲良しクラブのような「甘えの集団」になってしまっている一面も有ります。一歩外に出れば厳しい競合環境が有り、そういう中で生き抜いて行かないと業界から淘汰されてしまいます。ブロイラー業界はこの4、5年あまり良い事業環境に無かったのですが、今回のコロナ禍から風向きが変わりつつあり、経営的に良い条件が揃って来ました。そういう意味から、当社としては何としても現況を継続して行かなければなりません。ただ社内を見渡した時、まだ当社の中間管理職というのは働かされ感が有る社員が多く、自分達で会社を守って行く、この地で生きて行くという覚悟が足らないように思います。そのために世の中の当たり前、さらにそれ以上を目指すテクノ経営さんの指導との出会いが、今ちょうど当社としては好機だったのかなと感じています。
加納氏: 私がこの会社に着任した当時から感じていることは「報・連・相」の基本が出来ていないということです。そういう企業風土では社員も会社も成長しません。そのためその改革に徹底して取組み「何でも言える、何でも聞けるような風土づくり」を実現して行きたいと考えています。改善活動の中でも今後はチームでの改善に取り組んで行くため、チームで改善することで新たな課題を見つけて、その改善に取組むことで社員一人ひとりが自己改革を実現し、結果それが会社の成長につながる。そういうPDCAを回して行けば良い方向に繋げて行けると考えています。
不確実性の時代の成長戦略
加納氏: 外部環境と内部環境を踏まえた上で、今後の成長に向けた戦略としては、やはり全農チキンフーズグループの強みを最大限に引き出す経営を行うことにあると考えています。当社はグループ内では生産・製造の役割であり、親会社が販売という立場です。当社が生産を頑張り、親会社がさらに頑張って販売してくれるというようなグループ一体となった事業活動を進めて行きたいと考えています。また当社グループには宮崎、鹿児島、岩手というブロイラーの三大産地に会社が有り、それぞれがその地で販売に適した商品を作って行くという取組みを進めています。例えば現在当社で取り組んでいるのは、「産地パック」という小売業者のお客様が入荷した商品をそのまま店頭に並べて販売出来るような商品作りです。当初はあまり販売数が伸びなかったのですが、現在は1日で生産出来る限界まで販売数も増えています。そういう市場の先々を見据えた戦略でシェア獲得に貢献して行きたいと考えています。当社グループは業界のリーディングカンパニーを目指しており、当社としても、グループのシナジー効果を最大化に貢献出来るような取組みを今後とも進めて行きたいと考えています。
取材にご協力いただいた方
代表取締役社長 加納 雄三氏
製造部 部長兼 工場長 佐々木 新一氏
管理部 部長 吉田 順氏
PDFダウンロード
【コンサルティング事例】 住田フーズ株式会社様