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株式会社キッツ 様

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「イキイキしたキッツ」を実現!
エンゲージメントを高め未来を担う人材育成へ

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 配管内の水や空気、ガス、石油などの流体を流したり、止めたり、流量をコントロールする機能を持った流体制御機器の総称として呼ばれているのが、いわゆる「バルブ」である。その使用場所は多岐にわたり、浄水場から住宅、下水処理場などの水が流れる場所、オフィスビルやホテルなどの空調をコントロールする場所、石油精製・石油化学プラントやガスパイプライン、LNG(液化天然ガス)基地の生産プロセスラインなどのエネルギーが使われる場所、さらには産業機器や製造設備といったモノづくりの分野など、様々な場所で流体をコントロールし、見えないところで人々の生活や産業を支えている。
 株式会社キッツは、1951年(昭和26年)に株式会社北澤製作所として創業し、山梨県長坂町に工場を設置、青銅製バルブの製造・販売を開始した。創業理念に「常により良い品を、より安く、早くつくること」を掲げ、これまで一貫生産を基本に素材である鋳物製造から手掛けてきた。さらに、加工・組立・検査・出荷などすべての工程を自社内で対応するとともに、日本全国はもちろん海外への幅広い販売ネットワークを構築し、世界有数の総合バルブメーカーへと成長を遂げた。
 こうした中、トヨタ生産方式を源流としたNPS(New Production System)をさらに進化させるべく、また社内アンケートによって顕在化した従業員のモチベーション低下を改善し、未来を担うマネジメント人材を生み出していくために導入された同社の活動について、執行役員 バルブ事業統括本部 生産本部長 平林 一彦 氏、生産本部 長坂工場長 大瀬木 哲也 氏、事務局 古見 周 氏からお話を伺った。
(※2023年 ASAP+ 3号より)

世界に誇る総合バルブメーカーへと成長

御社の事業内容についてお聞かせください

平林氏: 弊社は、株式会社北澤製作所として1951年に創業し、70年の歴史を誇ります。バルブを中心とする流体制御機器の総合メーカーとして、日々の生活におけるライフライン、また日本の製造業の発展に貢献してきました。ここ数年はコロナ禍による様々な環境の変化、また世界情勢の影響による原材料価格の高騰など、先行きの不透明さが増した状況ではありましたが、こうした困難に立ち向かい、またキッツの持つブランド力、そしてお客様との信頼関係により、2022年12月期 売上高前期比17.8%増の1,599億円で過去最高を更新することができました。今期は利益面でも最高益の達成を目指して取り組んでいます。

御社独自の強みはどういった部分にありますか

平林氏: キッツグループでは12のブランドを展開し、90,000種類をこえる材質や形状の異なる様々なバルブを製造しています。国内はもちろん世界50ヵ国以上の販売実績があり、世界有数の総合バルブメーカーとしての地位を築いてきました。「常により良い品を、より安く、早くつくること」という創業理念を今日まで受け継ぎ、素材からの一貫生産を基本とし、鋳造から加工・組立・検査・出荷などすべての工程を社内で対応し、さらにきめ細かいサービスやアフターフォローをお客様に提供しています。

長坂工場はどのような位置付けになるのでしょうか

大瀬木氏: 国内の生産拠点としては、山梨県の長坂工場、長野県の伊那工場と茅野工場の3ヵ所に設置しています。その中でも、長坂工場は創業当初に設立された工場で、青銅製バルブの製造から現在ではステンレス鋼製バルブの製造を中心に稼働しています。

部門間の連携不足や顕在化したモチベーションの低下が課題に

弊社のコンサルティングを導入する前に、どのような課題をお持ちだったのでしょうか

平林氏: 生産本部内で実施した社内アンケートで、社員のモチベーション低下という結果が顕著に出ていて、これは何とかしなければならないと考えていました。エンゲージメントという言葉が出始めた頃でしたが、どうやって現場で働く社員達のエンゲージメントを高めたらいいのか。また、ボトムアップ活動の充実も図りたい。こうした様々な課題をクリアしていくために、コンサルティングの導入を検討しました。

百聞は一見に如かず 生産現場を新しい見方で指摘してもらった1日工場診断

弊社の1日工場診断を受けた印象はいかがでしたか

平林氏: 設備をフル回転するのではなく、売れた分だけ作る生産方式でずっとやってきているので、「ムダに見える部分もありますよ」ということは事前に説明をしました。やはりそこを指摘された部分はありましたが、ある意味、そういった指摘を受けること自体が新しい見方というか、30年間続けてきた中で慣れてしまっていた生産方式を見直す良いきっかけになると感じました。

古見氏: 現場の改善力や主体性を高めたいという要望をお話していましたが、視察やインタビューの結果、上司と部下のコミュニケーション不足や部門間の連携といった、こちらが最初に要望を出していない部分にも提言をいただきました。思い当たる節も多く、短時間での視察にもかかわらず、的確に指摘いただいた印象です。

コンサルティング導入の決め手はありましたか

平林氏: 1日工場診断の結果やご提案では、長坂工場が抱えている課題に対して、「イキイキしたキッツを実現する」というテーマに基づき、現場の状況を細部まで分析し、またその結果から具体的な解決方法や目指す姿、数値的な目標までを提示いただきました。特に、価値を生まない作業を削減し「余力時間を生み出す」という考え方が印象に残っていて、こうした新しい考え方を取り入れることで、活動の活性化はもちろん、モチベーションの低下も改善していけるのではという期待を持てました。これまでは内部の力で何とかしようと取り組んできましたが、さすがに限界があるだろうと感じていましたし、外部の新しい考え方を試してみるのもこの時期には必要なのではと思い、まずはやってみようということになりました。

活動開始前に、まずはテクノ経営が提唱するVPM ®の基本を習得

事前活動の印象はいかがでしたか

古見氏: 実際のコンサルティングが始まる前に、事務局のメンバーに対して数ヵ月間、テクノ経営さんが提唱されているVPM®の基本について指導いただきました。弊社では素材から品質管理まで一貫生産体制を整えており、そのモノづくりを支えているのがマーケットインの発想による「KICS(KITZ Innovative and Challenging System)」に基づく生産方式となります。受注先行型の生産となるため、その部分とうまく合致するのかという懸念がありました。しかし、その点については他社での実績もあると太鼓判を押していただいたので安心できましたし、「じゃあ、やってみよう」と思うきっかけにもなりました。
 実際の現場への展開に関し、個人的には「現場にVPM®の情報を一気に出しても、なかなか理解してもらえないのでは」と感じていました。VPM®の活動で重要なのはスモールステップで一歩ずつ説明をし、一歩ずつクリアしてもらうことだという話を聞き、「なるほど、それは確かにそうだな」と思った記憶がありますね。テクノ経営さんのVPM®では価値作業、付帯作業、無価値作業に分けて、価値作業以外の時間をできるだけ削減し、余力時間を生み出すというもので、これまでの弊社には無い考え方でしたので果たして本当に可能なのかという思いはありました。

現場との意識の乖離が大きかった導入当初

コンサルティングの導入にあたり、どういった苦労がありましたか

大瀬木氏: 現場という部分でみると、改善というのは思考の中で二の次というか、最も重要な業務は生産をすることになります。そのため、改善を考えたり、実施したりするのは基本的には上長など役職に就いている人や改善班の人の業務だという考えが強く、コンサルティング活動を導入して進めていく上での障害というか、プレッシャーになりました。
その点については、まずはリーダー層に対してなぜ改善が必要なのか、外部環境がこれだけ変化している中、自分達だけが何も変わらないのは淘汰されてしまうという話をしたり、改善をした結果、自分達の仕事がやりやすくなることに気付いてもらったり、そういった部分が現場の認識や考え方を変えていくには有効でした。

古見氏: 正直、導入当初からすべてが大変でした。当然現場はこれまでやったことが無いわけで、外部のコンサルティングを導入することに期待感もあれば不安もあり、ともすれば不信感もある中、導入の背景や今後の流れ、現場の役割を説明してまわりました。いざ開始すると、2週間ごとに指導会があり、あっという間に次の回が来てしまう。それまでにスケジュール調整から各部門の進捗確認、そしてコンサルタントを迎えるというのが非常に慌ただしく、こなすだけで手一杯でした。
 私はまずは1期目の事務局メンバーとしてこの活動に参加しましたが、最終的にはリーダー層までは一定の達成感というものは与えられたかなと。しかし、メンバー層がどれだけ主体的に活動へ関われたかというと、そこは少し課題として残ったかなと思っていて、その難しさを改めて感じました。

数値的な成果はもちろん、実践を通して皆の意識を変えて成長していく活動へ

コンサルティング導入の成果をどのように実感されていますか

平林氏: 品質関連や生産など、いくつかのグループに分けて活動を進めてもらいましたが、従来の製造ラインにこだわらず、もう少し幅を広げてグループの人員を構成したことで、いろいろな考えを持ち寄ることができ、また部門間をこえた人のコミュニケーションも活発化できました。あとは、グループのリーダーに一般職の人から抜擢し、経験のあるライン長などはグループをサポートする役割にしました。こうすることで、人を動かし、目標に向かって進んでいくマネジメントについて、実践を通してリーダーが学び、成長する機会となり、ボトムアップ活動の本質的なところを達成することにつながりました。リーダーの人達は大きなプレッシャーと大変な経験になったとは思いますが、人材育成の面では非常に良かったのではないかと思います。

大瀬木氏: 現在、テクノ経営さんのコンサルティングを導入して2年目を迎えています。総合効率という考え方では、すでに平均して25~26%アップしている状況です。様々な改善活動を通じて、時間短縮などの取り組みを積み重ねることによって、数字として着実に効果が出ています。現場に出ると、各製造ラインでみんなが丸くなって話し合いをしている光景をよく見かけるようになりました。現場の環境も通路などを含めて整理や掃除が行き届くようになり、周りの方やお客様からも褒めていただく機会が増え、こうした目で見て分かる変化も大きな成果かなと思います。
 あとは、活動のリーダー達が管理職と同じように問題を意識し、対策を考え、対応を評価してPDCAを回していく、さらには成果発表の場では200名以上の社員がいるところで発表を行うなど、若手社員の育成も非常に大きな効果を発揮してくれています。

古見氏: これまでのボトムアップ活動は自由度の高いものでしたが、それに比べるとテクノ経営さんのコンサルティングを導入したことで、活動の最初から最後の報告までしっかりと段階を経ていくようにプログラムされた活動となりました。リーダーは大きな責任を担いますが、それを経験した人達を見ると、ずいぶん頼もしくなったと感じます。実際にライン長などの役職へ抜擢される人も出ていて、社内的にもきちんと評価され、人材育成に関して、すごく良かったなと思います。

STAFF COLUMN 新たな時代への挑戦

~確かな未来を創造していくために~

執行役員 バルブ事業統括本部 生産本部長 平林 一彦 氏: この活動でまずは従業員のエンゲージメントを向上し、皆さんの気持ちや意見を吸い上げて、そして生産本部が求めている10年後のなりたい姿を目指していける、そういった人材を増やしていきたいというのが大きな目的となっており、まずはそこを達成していくことが重要です。製造部では、持続可能な製造プロセスを作る、オンリーワンの製造技術力をつける、グローバルな購買ができるようにするという3つの方針を掲げていますが、5年先がどうなっているか分からないような時代ですので、その時にどのように変化に対応できるか、オリジナルな発想を生み出せるか。こういった目標を達成するために、いろいろな人材を増やし、この取り組みをもっと充実したものにしていきたいですね。

生産本部 長坂工場長 大瀬木 哲也 氏: 方針に掲げている内容を実現させることが一番の目標になりますが、今後50年先も長坂工場を永続させていくというのは1つの大きな目標になります。当然、社会に対しても、お客様に対しても「キッツって良い会社ですね」と評価いただけることを前提とした継続です。当面はステンレスバルブの専門工場として、海外の製造拠点を含めて長坂工場がマザー工場として事業を引っ張っていくための強さ、実力を持った工場にしていく。スマートファクトリーなどの最新技術を取り入れることも大事でしょうし、現在のような改善活動も大切になってくると思います。やはり最後に行きつくのは、みんなが前を向いて進んでいける、自主自立と自覚を持って目標に取り組んでいく、そうした未来に社員を導いていきたいというのが私の目標です。

事務局 古見  周 氏: コロナを経て、働き方が結構変わったなというのを感じています。テレワークの導入などでいろいろな場所で働けるようになりましたが、地方の製造業という視点で考えた時、良いことばかりではないというか、難しいなと思っています。テレワークで都会から人が来てくれるのであれば追い風ですが、一方で工場では基本的に現場があり、出社しなければいけません。この時代に、じゃあ工場へ出社して力仕事をやりたい人が多いかというと、なかなか厳しい部分があると思います。そういう意味で、これから働いてもらえる人にとって魅力的な工場、キッツにならなくてはいけない。そのために必要な原動力はやはり“人”だと思います。キッツを変えていける人、強くしていける人、そういう人材をいかに増やしていくのか、そこを実現させるのがミッションだと考えています。

取材にご協力いただいた方

●株式会社キッツ
執行役員 バルブ事業統括本部 生産本部長 
 平林  一彦 氏
生産本部 長坂工場長
 大瀬木 哲也 氏
事務局
 古見   周 氏



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