本ページでは、株式会社三栄機械様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
設計からメンテナンスまで、幅広い分野にチャレンジする。地域の発展に寄与しながら、秋田から世界に 発信していく。それが株式会社三栄機械のモノづくり戦略である。
鋼構造物の製作や製缶、省力化機械、運搬設備、廃棄物処理、水処理、紛体などのプラント工事、設備メ ンテナンス事業など、様々なジャンルに取り組んで来た同社だが、現在の主力は最先端の精度が求められる 航空宇宙事業の分野だ。
B787の主翼製造装置やMRJの胴体組上治具など、航空機の機体製造に関する設備や整備器材などの設計製作を進めて来た。 今、最も注力するのは新世代航空機Bー777X。三菱重工業株式会社を始め日本企業5社が部品の約2割を供給するプロジェクトに参画している。
大切なことはテクニックではなく、まず「やる気」の充実!生産性 30%アップを目標に本社工場と象潟工場で取り組まれる全員参加の モノづくり改革を取材した。
(※ASAP 2016年 No.2より抜粋)
株式会社三栄機械様
他社のやらない分野に挑戦
はじめに貴社の事業内容についてお伺いします。
齊藤:
今年で創業46年目に入りましたが、出来るだけ他社が取り組んでいない分野に取り組んで来ました。 それで当社の規模はあまり大きくないのですが事業内容は多岐に渡っています。
ご存じのように由利本荘市はTDK株式会社の一大生産拠点として知られています。現在もTDK株式会社のお手伝いを続けていますが、当社の創業時には既 にTDK株式会社と取引している立派な企業が数多く有りました。そこに割り込むと言えば言葉が悪いのですが、伝統的な考え方が残る地域でもあり、他社がやらない分野を選んで参入する必要性が有ったのです。 それが一つの発端となって「人のやらないことをまずやって行こう」というポリシーが生まれて来たのだと思います。
現在、当社では3つの分野で事業展開を図っていますが、その1つがオーダーメイドの自動機関連事業で 従来からの弱電・半導体メーカー向けの生産設備から、 近年では自動車や航空機製造に関わる製造設備・冶工具に注力し、秋田から世界に発信する当社の特色とな っています。
2つ目は象潟工場をメインとしたプラント工事の関係です。これはTDK株式会社の原料プラントのお手伝いをして来た経緯も有り、粉体プラントからスター トしていますが、冒頭にもあるように水処理やごみ処理、近年では再生可能エネルギーに代表される蓄電池や風力、バイオマスといったプラント工事が多くなっ ています。
3つ目は従来納めた設備装置の保全はもちろん、大手メーカーの設備やプラントの修繕、維持管理といっ た今まで培ったノウハウとフットワークをいかしたメ ンテナンス事業です。
このように当社の事業内容は3つに集約されます。 ですから製造している製品も鉄骨建物のような物から 精密機械まで、あまり他社では考えられないような製造品目を持っていることが当社の特色です。
その中でも一番力を入れておられるのが航空機関連の事業でしょうか。
齊藤:
今は日本に戻ってくる動きが有りますが、生産 拠点の海外移転が加速した時期が有りました。当社が 頼みとするTDK株式会社なども中国に進出され、不安を感じたことを憶えています。
そうした中20年ほど前から航空機の整備機材や機体を造る治具製作などを請け負って来た経緯が有り、 航空機事業へ本格的に力を入れて取り組むことにしました。事業化に当たっては大幅な設備投資を行い、オ ーダーメイドに対応できる体制を整えました。
最初に取引を始めたのが、今は川崎重工業株式会社 の完全子会社になっている日本飛行機株式会社です。 その後、本格的に取り組んだのが富士重工業株式会社 の仕事。その後、三菱重工業株式会社、新明和工業株 式会社など日本の機体製造に関わる有力企業とお取引させて頂いています。現在では、多い時期で航空機関 連の仕事が4割以上を占めている状況です。
例えば、ボーイング787では三菱重工業株式会社が手掛ける主翼の製造設備を、また富士重工業株式会社の仕事もかなり頂きました。試験飛行が始まった国産 初のジェット旅客機MRJでは、後部の胴体を組上げ るための治具を設計段階から担当させて頂き、小牧空港にトレーラーで運搬するための翼を上手く収納する装置などの製作にも携わって来ました。
今忙しく始まっている最新鋭機のボーイング777X については、モノづくりスタイルが大きく変わり、全 面的にロボットを採用した自動化が進んでいます。今 まで飛行機のモノづくりでは、どちらかといえば人手 による作業が多かったのですが、人材不足や定着率の 問題から設備投資による合理化が進められています。 航空業界も絶対的な命題である品質の確保とコストリ ダクションを両立させる管理面が厳しくなっているよ うです。
夢のある職場づくりを目指す
コンサルティングご導入のきっかけについてお伺いします。
齋藤:
秋田県に機械金属工業会という経営者の集りが 有りますが、そこで開催した講演会に参加したことが きっかけです。当社も私たちのような団塊の世代が中 心になって運営して来たのですが、やはり若い人が自 立して問題解決出来る会社にして行かなければいけま せん。
そうした悩みを抱えていた中で「テクニックを教えるのではなくて、自ら解決方法を導くことが出来るよ うにすることがモットー」という海老名コンサルタン トのお話を聴いて感銘を受けました。
そこで工場診断をお申込み頂いたのでしょうか。
齋藤:
そうですね。先ほども少しお話しましたが、情 報が飛び交う今の時代は方法論というよりも「何をどうやるか」が先だと思うのですね。一般的なコンサル タントの場合は手法やノウハウが先行して「自主性」 という側面が二の次になっているように感じます。
当社には若い人を含めて新しいことを拒否しない、ある意味で素直な社風が有ります。この社風を活かして 行きたいと考えていたところ、テクノ経営に工場診断 をお願いして、コンサルタントとの相性も良いと感じ ましたので導入することにしました。
大型5軸加工機
活動テーマと対象部門についてお伺いします。
猪又:
私と柴田が活動事務局を担当しています。当社 の活動名は「SUNRドリーム作戦」で、略して「SD 作戦」と呼んでいます。夢の有る職場、創造性の高い会社づくりに由来した名称になっています。
活動は2014年6月にスタートし、加工、組立、製缶、 生産管理、品質保証、技術、営 業、総務、象潟工場の9チーム に分かれて進めて来ました。活 動の初年度は8チームで開始し たのですが、2年目に入った去 年の12月から総務が活動に加わり全社活動となりました。
活動目標についてお伺いします。
猪又: 定量目標としては、生産性を30%上げるため に各チームで取り組んでいます。たとえば加工チーム であれば、設備稼働率を30%上げる、組立・製缶に 関しては、生産性30%向上、品質保証においては業務効率30%向上、技術は設計速度を30%向上、営 業は受注額を前年度より30%上げる。このように 個々に目標設定を行っています。
齊藤: 当初はリーダー中心に、生産性の尺度を現状と 照合しながら検討して行きました。その活動指針に基 づき、グループ活動のテーマ設定を進めた訳です。
猪又: また定性目標として、「私達は『わくわくドキド キする』夢の有る人間集団を目指します」というス ローガンを掲げ、現場の管理監督者を中心に働きやす い職場づくりを進めています。
象潟工場では独自のテーマで取り組まれているのでしょうか。
猪又: 象潟工場はプラント関連と工場メンテナンスの 部隊です。20数名の人員で作業していますので、本 社工場とは別に、初年度より少数精鋭化を目指した 「ひとづくり活動」に取り組んでいます。現場監督の能 力向上と見積作業の精度向上に向けて動き出している ところです。
見違えるようになった現場
初年度の活動はどのように始められたのでしょうか。
猪又: まずはモノづくりの基本である5S活動から始 めました。5Sについては以前から社内でも取り組ん でいたのですが、実際にコンサルタントから指導を受 けてみると、5Sに対する捉え方が異なり戸惑うことが多々有りました。やはり自分たちと外部からの眼で は視点が全く違っていると実感しました。
柴田: 昔は「散らかったら単に片付ければよい」とい う観点で周期的にやっていました。そこにルールが伴っておらず、直ぐに元に戻ってしまうという繰り返 しだったようです。5Sを仕組みとして定着させる着想が無かったのだと思います。
グループ改善のアイデアを掲示
必要な工具類が一目で分かる!
5S活動の成果は如何でしょうか。どの位の期間続けられたのでしょうか。
柴田: 少し良くなったかなと思えたのが3ヶ月目くら いです。お客様からも評価され、ルールが伴って来た のは最近ですね。
猪又: 社長の方から「日本一きれいな製缶工場」を目 指すというお話を聴かされて、それ以来、私自身も 日々努力しています。まだまだそこまでは行きませんが(笑)。
齋藤: やはりモノづくりというものは気持ちが入らな ければ良いものは出来ない。その頃よく言っていたの は5Sというのは知識ではなく、きれい、汚いという のはまず感性の問題だということです。「これでいい んだ」と思うか「これじゃまだ駄目だ。もう少しきれ いにしておこう」と感じるかの違いです。一挙に出来 なくても、昨日よりも少しきれいになるように努力す る。それをずっと続けて行けば長い時間が掛っても、世界で一番きれいな工場になるという可能性は有る。 ただ「少しずつ」という意味はものすごく深くて、一 方でスピード感が大切だと思う。社内の自主活動では 進みが遅いと感じていましたので、コンサルタントに 入ってもらって、そのスピード感を上げてもらった訳 です。
測定器具の三定-取り出しやすく
整理・整頓-長いモノには巻かれる
5S活動後の活動はどのように進められているのでしょうか。
猪又:
5Sによる基盤づくりの後は、チーム単位での 日常活動(C改善)を通じて、主に問題発見マインドの 養成、気づきによる意識改革を中心に生産性向上に取 り組んでいます。一人ひとりが傍観するのでなく、当 事者意識を持つことを目指しました。また全社横断的 なテーマに取り組むプロジェクト活動(D改善)では、 数値目標の達成に向けPDCAを廻しています。
初年度はリーダー育成を対象に、各グループのリー ダー中心に指導を受けました。その後、昨年12月か らは全員を対象に指導されるようになっています。
月2回のコンサルタントからの指導では、毎回夕方に 報告会が開催されます。そこでプロジェクトオーナー (社長)及びプロジェクトリーダーから指示が出て来 ますので、それを専任メンバーが議事録を作成して各 チームに配布します。それを受けて改善活動の方向性 の摺合せを行い、次のコンサルタント指導に繋げて行 きます。このようにスパイラルアップを目指して進めています。
ミーティングルーム
活動成果は如何でしょうか。
猪又: まず5S活動で汚れていた製缶工場が見違える ように変わりました。お客様からも、「見た目が変わ ったな」と褒められるようになりました。5S活動で 美しくなり、生産性もかなり上がったのではないかと 思います。
柴田: 以前は線引きした部分で作業するときに、適当にモノを置いて作業していたのが、白線に合わせてきちんと整理・整頓されるようになりました。
猪又: ただ活動2年目に入ってもまだ十分に生産性を 上げきれていないことが一番の課題だと思います。加工部門の占めるウエイトが当社では大きいので、そこ の生産性向上に注力することが必要だと感じています。
齊藤: 確かに定数的な目標達成という意味ではまだま だですが、この改善の状況が続いて行けばあとは時間 の問題だろうなと思います。一番まずいのは昨日と同 じで進歩の無いこと。少しずつ良くなることが必要で す。昨日までやれなかったことをどれだけ出来るようになるか、それがスピード感を生み出すのだと思いま す。
コンサルタントとの相性も大切
事務局としてご苦労された点は何でしょうか。
柴田: やはり最初の頃、リーダーたちにやらされ感が蔓延していたことです。相当なストレスを感じている 様子でした(笑)。
猪又: コンサルタントが来るからやるという感じでしたが、指導を受ける中で、自分として譲れないところ はコンサルタントと話をしていました。そのあたりは コンサルタントにもご理解いただき、各メンバーも 徐々に協力してくれるようになりました。特に全員が 活動に加わるようになった12月以降はグループが一 つにまとまって来たように感じます。
柴田:
初年度の目標として生産性30%アップを掲げ ているのですが、各グループから数値に関する報告が 上がって来ない悩みを感じていました。
比較的早く、自分たちに合った目標と活動内容を決 めたチームも有りましたが、日々の改善成果を定量的 に把握する仕組みが曖昧で、客観的に良いのか悪いの か判らないチームが多かったようです。ただ現在では、 全体的な足並みが揃って来たのかなと思います。
改善事例
コンサルタントとの相性は重要ですね。
佐藤:
社内の人間が反発せずに改善を継続出来ている のは海老名先生のおかげだと思います。そういう意味 では非常に感謝しております。ムダ作業と価値作業は どう違うか、それを考えさせることからスタートして います。
必要なモノがすぐに取り出せる、簡便に段取り出来 るといった改善が5S活動を通じて生まれました。気づきによりムダを価値に変える発想が非常に良いと思 いました。多くの企業でコンサルティング経験も豊富 で、様々なアイデアや具体的なアドバイスを頂きまし た。上から目線でなく「私も一つアイデアを出してみ ましょうか」といった感じで活動に参画頂き、また従 業員も親しみを持ってお付き合いさせて頂いている。 私はそこが一番感心しているところです。
細矢:
海老名先生の一生懸命さが伝わって、先生が真 剣だとごまかしが効かないのでみんなも一生懸命に準 備しています。そういう感じで先生が来る3日前位に なれば「どうしよう、どうしよう」と頭を悩ませてい ます(笑)。
初めの頃は、適当にやる感が見られましたが、最近 では全員で相談する姿が見えるようになり、それだけ 活動に対する真剣さが感じられます。この状況が続け ば、早いうちに目標を達成出来るだろうと思います。
今後の方向性やビジョンなどについてお伺いします。
齋藤:
私が常々申し上げているのは、生きて行くための仕事を全員で進め、それが世間から評価され利益に 繋がることが求めるべき姿だと言うことです。大事なことは「世の中からご褒美を頂くために何をするか」を掘り下げて行くこと。
それを全員で実践して行こうと言うことです。環境 が変化し、厳しくなってもちゃんと利益が出せて行け る会社であること。三栄機械が有って良かったなと思 えること。そういう会社になることを目指して行きたいと思います。