本ページでは、エルナー株式会社 滋賀工場様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
1937年創業の伝統、社名はドイツの女流詩人エルナー(Elna)に由来する。コンデンサとプリント配線板 に特化したトップ水準の製品開発を続けるエルナー株式会社。高級オーディオに広く使われた同社のコンデンサ は高い性能を発揮、音楽マニアから“音のエルナー”と称賛されてきた。
近年では車載・産業用機器などの多様なニーズに対応。関連企業のエルナー東北株式会社では太陽光発電事業 を開始。環境負荷を抑えたハイグレードな電気二重層コンデンサはJAXAが打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」 にも採用された。
コンデンサの青森工場、プリント配線板の滋賀工場をマザー工場として、激化するグローバル環境に打ち勝つコスト競争力、 製品開発力の強化を進める同社。独自の技術で顧客要望と柔軟に対応するエルナー株式会社の強みは、経営陣が現場に入り全 社一丸となって課題と取り組むことである。次世代に向けた事業の拡大、コスト低減に向けた活動を取材する。
(※ASAP 2014年 No.5より抜粋)
エルナー株式会社 滋賀工場様
左から
滋賀工場 管理部長 小森 規博氏
滋賀工場 工場長 松村 隆治氏
副事業本部長 堤 佳人氏
滋賀工場 製造部長 伊吹 文男氏
成果創出の仕組みづくりをめざして
本日はよろしくお願い致します。まず、貴社の概要についてお伺いしたいと思います。
松村:
当社は電解コンデンサとプリント配線板で事業展開する電子部品メーカーです。設立は1937年で、電解コンデンサの製造から着手して、1960年からプ リント配線板の製造を始めており、非常に長い歴史を持っております。国内は、滋賀・青森・白河・松本に 工場があり、海外は、タイとマレーシアに工場があります。
滋賀工場は創業時からの歴史ある工場です。両面基板・多層基板・ビルドアップ基板の一貫工場で、現在 はプリント配線板のマザー工場であり、技術開発の拠点でもあります。用途としては車載・産業機器・通信 機器が中心ですが、お客様は国内だけでなく、海外にも多く、今後は、よりグローバルな位置づけを持った 存在感のある工場を目指しております。
滋賀工場は車載製品がメインなのですが、もともと民生機器を中心に軽薄短小を追究し、世界でも非常に高い生産性を追求し達成してきた工場です。そのなかで養った高機能・高品質・高生産性技術を、伸長している分野である現在の車載分野などの製品に応用しています。
今回、VPMを導入された経緯についてお話しをお聞かせください。
松村:
プリント配線板業界は非常に厳しい市場ですが、 顧客の海外展開に伴い、海外のプリント配線板メーカーとの競争も激しくなっており、その中でも、国内で 生き残れる、成長できる工場として、マザー工場である滋賀工場の体質改善のためにVPMを活用することになりました。 御社との出会いは、私(松村)と副事業本部長の堤が、御社のセミナーをいくつか参加したこ とがきっかけでした。セミナーでは、海外工場での展開の事例や、技能伝承、活人といった、弊社の方向に マッチした事例などがあり、大変興味を持ちました。特に、中国に負けないというお話には感銘を受けました。
その後、1日工場診断となったわけですが、改善は日々やっていたものの、社内ではベンチマークの精度 がボケてしまう傾向がありました。第三者の視点で世間の水準から見てどうか、色々な会社を見られている 経験のある御社の定量的な指摘は非常に参考になりました。我々も気づいていたのですが、慣れによって鈍 感になっていた部分を、定量的に指摘されたことは新鮮でした。その後、徹底して推し進めるために、御社の力を借りて活性化することになりました。
第1期活動の実際
ありがとうございます。昨年10月から活動を開始され、現在も活動進行中ですが、 取組内容と成果については如何でしょうか?
伊吹:
今回のプロジェクト活動は、「車載品質の確立」 「生産性UP」「5Sによる意識改革」「気づきを改善に結びつけて職場の活性化」といった4つの方針を掲げ て進めて来ました。
初年度の活動目標は、ムダ排除を基本として具体的な成果創出をはかることです。品質的な問題解決や体 系的な設備保全の推進、ボトルネック解消に向けた組織間の協業体制の強化など、自律的な改善活動が推進 できる体制構築、そして改善の仕組みを作り上げることを目指しました。
その結果、業務を時間軸で数字化する理論づけされた指導に基づいて、人員の分担や業務の変更を行い、 価値業務への転換を追求することで当初の目的を達成することができました。活動を指揮する職長自身も数 字が不明確では現場で起きている状況を把握できません。価値作業の見極めをベースに「数字で捉える」「言 葉で表現する」ことに重点を置いて活動を進めてきました。さらに、意識改革とムダ認改善サイクル構築のため、 「気づきシート」の活用で、部下の意見を吸い上げ、職場の活性化に結びついたことも大きな成果だと思っています。
それは素晴らしいことだと思います。職場が活性化してきたと言うのは 具体的にはどんなことからですか?
伊吹: 職場の5Sに関しても見た目が変わっただけで なく、生産効率追究の意識を持ち、自ら仕事を考え、自ら変えて行ったことが大きいと思います。確かに目 標の数字は活人と言う具体的な形で与えられ、ハードルが高いと感じられたと思います。最初は、メンバー の抵抗が非常に大きく、活動の理解をなかなか得られなかったと言うのが、正直なところです。コンサルタ ントの冷静な指導を戴きながら、まず、リーダーの意識が変わってきたということがあります。
活動初期は、リーダー間の意識の差がある程度あったのでしょうか?
伊吹: 今回の活動は全部で16チームあり足並みをそ ろえるのが大変でした。気づきシートの活用の仕方がチームリーダーの考え方で差が出たようです。どんど んアイデアを出してくるチームあれば、良い気づきがでているのに、なかなか、活動に反映できていない状 況も見受けられました。
徐々に克服されてきたのですね。どんな方法で進められましたか?
松村: 16チームのリーダーは毎週開催されるコンサ ルティングの場で、他チームの状況を知ることで、差が出ていることが見え、気づきがあったと思います。 リーダーはその刺激で育ち、一般の従業員は気づきシートで育っていったと思います。気づきシートはこれ からも使っていきたいと思います。また、毎週、コンサルタントが来られるので、日々改善を進める活動の 場が出来るわけです。自主的活動のサークル活動とは違い、業務の一貫、仕事の中に組み込まれた状態にな っていたのが良かったと思います。
伊吹: コンサルタントも、チームリーダーを良く見ていて、指導の仕方を変えて頂いたりと、うまく流れに乗って意識改善をして戴いたと思います。私も活動に 全て参加して、アドバイスしたり、リーダーとその上のチームリーダーとコミュニケーションの活性化に努めてきました。
専任(社内コンサルタント)の方にも、しっかりフォローして戴いたようですね。 どんな成長されたチームリーダーさんがいらっしゃいましたか?
伊吹: 積層チームのリーダーは、最初は活動を斜めに見ていたようですが、気づきシートを活用して、自らどんどん変わって行きました。
松村: これはすごかったね(笑)。リーダーだけでなく、 メンバーとの掛け算で非常に職場が変わったと思います。
伊吹: また、レジストのリーダーは定量的な業務分析を徹底して行い、職場を変えて行ったと思います。
松村:
そうそう、工場の品質会議での発表で、要因分析が非常によく出来ていましたよ。問題解決のレベルが非常に上がったと感じました。
浅井工場のリーダーは、生産性を考えた5Sの実行が大きかったと思います。いま述べただけでなく、全てのリーダーが目標値を達成することができたことが良かったと思います。
キックオフ大会
「あたり前むきプロジェクト」の推進
素晴らしいリーダーがたくさん育ったようですね。活動に対する満足度は ズバリ何%でしょうか?
伊吹:
100%でしょうか。90%というとその差は何でしょうか、となるので(笑)。
2期活動も1期目を引き継ぎ、「あたり前むきプロジェクト」といって、工場のすべての部門が活動対象となっています。1期目のチームは、プロジェクトの目標数字を上回るチャレンジ目標を自ら設定して進めています。
小森: この「あたり前むきプロジェクト」と言うのは、 社員から募集した名称です。ネーミング的にはあまりかっこよくないのですが、弊社の社長からも常々、 「基本が大事だ」と言われていた中で、我々の進むべき方向とぴったりした名称のため、決定しました。 「やらなければいけない基本的なことをしっかりとやろう」「競争のなかで生き残るためには、日々改善し て行くのはあたり前。それを前むきにやろう」と言う2つの意味があります。
非常に新鮮味がある名称ですね。さらに上を狙うことがあたり前、 まさにあたり前むきですね。今後の活動の方向についてお聞かせください。
松村: 今後、マザー工場である滋賀工場を軸に、QCDS含め業務品質向上を図っていきます。車載分野をはじめとしたお客様からは非常に期待されており、そ れに応えるように、グローバル展開の中で、車載品質世界№1を目指して進めていきます。
堤: まず今回、滋賀でこのような活動をやったのは、 グローバルで勝つためのマザー工場構築のためです。それは、海外のあらゆるメーカーと勝負しても勝てる 国内工場であることが条件です。さらに、滋賀工場は、これから新商品や高付加価値品の発信拠点として、他 の事業所や海外工場で生産するためのマザー工場として、作業の標準化や、ものづくりを植え付けていく位 置づけが非常に重要になってきています。今までの自分の部署だけを守り生産を達成するんだ、という意識が、 現場を数値化することで視点も変わり、このようにやれば目標を達成できるんだ、という大きな体験に 繋がりました。いい土壌づくり、リーダーの人間的な成長の良いきっかけになったと思います。今後グロー バルな視点で活躍してもらえるものと思っています。 そんな意味で、今回の活動は目標を達成できたので満点です。今後の活動に対しても大きな期待をしています。