本ページでは、内田鍛工株式会社様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
東海道の宿場町として栄えた四日市宿は、伊勢参詣の分岐点であり、陸と海の交通要地だった。毎年、春には市内を流れる十四川や 海蔵川堤の桜並木が人を集める。
現在は、中京工業地帯の代表都市として、日本随一の工業集積地帯でもある四日市市。開港100周年を記念して建設されたポートビル (高さ100m)からは、鈴鹿山脈や四日市港の石油コンビナートの夜景が探訪できる。
今回、訪問させていただいた、内田鍛工株式会社は明治時代の創業。鉄を加工する技術をベースに、通信鉄塔や架線金物の設計・製作・ 施工を行っている企業である。
高い技術力をベースに、安定した業績を維持する同社では、改善活動に対する取組みを推進中。現場力の強化が課題であるという 改善活動の取組みについてお話をお伺いした。
(※ASAP 2011年 No.3より抜粋)
左から専務取締役:内田圭士郎氏、製造部長:内田裕二氏
UTKグループについて
御社の事業内容や製品についてお伺いします。
当社は明治10年が創業となります。初代は農機具の製造を行っていましたが、送電線のワイヤーグリップを製造することになり、 電力会社に納入するため法人化が必要となり、昭和27年に内田鍛工株式会社を設立することになりました。その後、電力会社向けの配電用 金物を製造して今日にいたっています。
その後、電力会社向けの架線金物から、情報通信、建築、交通、電気機器、農業など、社会の多彩なシーンで活用される商品を通して、快適な 環境づくりに貢献しています。
UTKグループにはどんな企業があるのですか。
主なグループ会社としては、北海道と九州に拠点を構えています。北海道内田鍛工株式会社は北海道電力関係のほか、道路関連の製品を 製造しており、九州内田鍛工株式会社は、道路関係では交通違反の取締用に使われるNシステムや通信関連ではNTTドコモ関係の仕事をしています。
省エネ関係にも取組まれているそうですが。
約15年前から、新エネルギー分野にも参入しています。太陽光発電用モジュール架台は家庭用だけにとどまらず、ガソリンスタンドや 企業で使われる業務用の中型製品も手掛けています。また、小型風力発電ポール等の製品も作っています。
新しい分野の製品開発についてはどうでしょうか。
新しい分野では、新幹線の鉄橋用消音鋼板の開発事例があります。主に鉄橋下部に使われる遮音板で、鉄板の中に樹脂をサンドイッチするという ユニークな発想で騒音の振動エネルギーを吸収することに成功しました。
本社社屋
ものづくり部門としては、どんな工程があるのでしょうか。
当社製品の特色は、ライフサイクルの長い製品であるということです。ですから10~20年の風雨に耐えるものづくりが必要となります。
各工程とも自動化と手作業の工夫で信頼性の高い製品づくりを心がけています。
ものづくり工程としては、鍛造・プレス・溶接・めっき・組立という各部門があります。
鍛造工程は、創業時からの長い伝統を持つ UTKものづくりの原点ということができます。
プレス工程は、全工程一貫自動生産により、自動化、省力化を推進しています。連続自動プレスライン、省力化装置、ロボットの導入により、金型から 自社生産する体制をとっています。溶接工程もロボット導入をはかっていますが、製品の安全性に関わる箇所は手作業で丹念に作業しております。 めっき工程は、溶融亜鉛めっきで、日本工業規格適合性認証を取得して防錆技術の向上に努めています。
組立工程では、オペレータ方式により、一人で3工程をサポートできる体制を構築し、合理的な量産体制によるローコスト化をはかっています。
UTK活動について
コンサルティングを導入による改善活動に取組まれたきっかけは何でしょうか。
現在、3年を目処に現場部門の改善を進めていますが、実は、テクノ経営にお願いする以前、現場力を強化したいという思いがあり、 あるコンサルティングを導入した時期がありました。しかし、それは金融機関系であったこともあり、現場の感覚とは乖離したものでした。
当社では、電力会社の仕事が多いという背景があり、現場意識にも危機感が少ないように思います。しかし、伝統と安定に胡坐を掻いていては 時代に取り残される恐れがあります。そこで、製造業を専門とするコンサルティングの導入を検討することにしたわけです。最初は大阪で開催された セミナーに参加したのがきっかけであったように記憶しています。
ありがとうございます。依存体質に見られる課題に気づかれたということですね。
当社の主要な顧客は電力会社ですので、事業的に安定しているといえます。そうすると、仕事の取り組み方もお役所的な感覚がでてくるようです。 また、製品のモデルチェンジが少なく、競争も少ないことから、将来の環境変化に対応するためにも、組織風土を変革し、現場力の強化を進める必要性を感じました。
事業的な安定は喜ばしいことですが、今後は環境対応力が求められるということですね。今回の活動目標や期間についてご説明ください。
活動目標としては、2008年からの3年間で、本社工場の生産性130%を目指す中期経営計画の一環として取組みを開始しました。活動名は、 1年目の目標である生産性20%アップにちなんでUTK-20としました。
第1期目の活動内容・成果はいかがでしたか。
第1期目は 導入当初の刺激もあり、社内改善の数も増え、まずまずの成果を出すことができました。現場の意識も活動後の1年間で ずいぶん変わってきたとは思います。もちろん、まだまだの部分はありますが。社内業務の改善提案に対しては、年間最優秀賞表彰として社長賞を 設定、改善効果がはっきりと見え、コスト的にも評価できる提案に対して、表彰状と金一封を支給しています。
また、出勤土曜日にカイゼンの日を設けています。毎朝自主的に10名程度のメンバーが会社周辺の清掃活動を行っていますが、カイゼンの日には 全員で活動するようにもしています。
UTK活動で重視されていることがありますでしょうか。
改善活動は、手法の習得よりも気持ちを一つにすることが重要だと思っています。そのためUTK活動のマークやバッチを作ったり、 いろいろなアイデアを考えています。現在の活動は本社工場の製造部門のみが対象ですが、事務所の皆さんにも活動バッチをつけてもらっています。 一人ひとりが活動に参画しているという意識を持てるようにするためです。
活動の苦労話、現場の反応などをお聞かせください。
活動開始前から見ると、だいぶよくなったというのが実感です。
なんで今までのやり方を変えなければならないのか、という反応もありましたが、いろいろと改善に取組むことができる仕掛けをしてきたつもりです。
時間がないという声に対しては、カイゼンの日を設けたて、積極的に活動に取組めるようにしています。また、四つの言わない約束で 時間がないということを言わない活動ルール化をしています。
四つの言わない約束とは何ですか。
四つの言わない約束とは、(1)「他人(他部門)のこと」は言わない、(2)「過去のこと」は言わない、 (3)「できない」と言わない、(4)「時間がない」と言わないです。
一般にVPM活動では、三つの言わない約束として使われているようですが、当社では、時間がないという反応が強かったので独自の要素を加えてみました。 この標語は工場の各部門、およびすべての事務所に掲示されています。
2年目以降の活動はいかがですか。
2年目に入って、少し活動がパワーダウンしてきた感があります。その原因はマンネリ化ではないかと思います。大きな改善テーマがなくなって きたということもあるようです。
そこで、3年目に入って、再度、活動目標の尺度を測定しているところです。基本的な部分を各メンバーに再認識してもらうことが重要だと考えています。 そういう点からも、参加メンバーには、やらされているという意識からの脱却が必要だと思います。
リーダーに対しては、原価意識や数字の感覚の習得をねらいに研修を開いています。各工程におけるリーダーとしての自分自身の役割認識をしっかり身につけてもらうことが重要だからです。
本社社屋の玄関には、現社長の祖父などが、実際に使用した
金床が置かれている。職人の心が込められた原点であるという。
最後に今後のビジョンについてお聞かせください。
当社のビジョンは電力と情報を通じて世界中の人々を幸せにすることです。
これからも新しく便利な暮らし創造の一翼を担うことを喜びとして、さらに新分野の開拓を目指していきたいと思います。